外務省に告ぐ 佐藤優


 2016.3.26      童貞の外交官はダメ 【外務省に告ぐ】

                     
外務省に告ぐ [ 佐藤優 ]
佐藤優おすすめランキング
■ヒトコト感想
元外交官である作者が、外務省の恥部を赤裸々に語る。すでにおなじみの内容もあるが、やはり外務省内部の独特な風習や問題などを、元外交官が語るというのは衝撃的だ。作者は外交官として有能だったのだろう。国策捜査により収監されはしたが、各所からの評価は高い。北方領土問題が遠のいた理由や、現在の外務省がインテリジェンス工作に弱いだとか。

さらには、最近の事件を例にだして様々な人物と対談を行っている。ただ、やはりインパクトが大きいのは外務省の問題を赤裸々に語る部分だ。童貞の外交官はダメだとか、機密費を流用し逮捕された外交官と幹部たちの関係だとか。そこまで実名を出して批判してよいのか?と思うほど赤裸々だ。

■ストーリー

露大統領の北方4島の訪問を許した結果、領土問題の解決は遠のき、空母建造を宣言した中国の海洋権益の拡大志向はとどまるところを知らない。外交の世界史的転換点にあって、失策と敗北を重ねた民主党政権下、日本外交は何を間違えたのか。インテリジェンスの生命線を担うべき外務官僚達の、目を覆う破廉恥な生態を指弾する一方、未来への処方箋を熱く示す。古巣へ下す言葉の鉄槌。

■感想
外務省の衰退を作者なりに嘆いているということだろうか。作者の外務省批判は今に始まったことではない。本作では、作者が外交官として働いていたころから、今にいたるまでの外務省への怒りが爆発しているような印象がある。

特に名指しで事務次官を否定したり、さらには最高裁判所の裁判官になったような人物に対しても、かなり非難している。ここまで実名で描いて名誉棄損で訴えられたりしないかと心配になるほどだ。機密費流用や外交官として手厚い手当がでるなど、組織独特の風習なども非常に興味深い。

外務省以外にも、東日本大震災での菅首相の行動などにも意見している。昨今の大きな事件について作者なりに見解を示している。特に興味深いのは、大阪地検による証拠の偽造事件についてだ。

世間での流れとは別に、大阪地検を批判するのではなく厚生労働省側に隠れている真の巨悪を暴けなかったことが問題だと語っている。何も考えずマスコミの情報操作に流されるのではなく、作者なりにインテリジェンスを駆使して状況を分析する。非常に興味深い内容となっている。

元外交官として、世間一般の企業とは違う、外務省の特殊さをこれでもかと暴露している。駐在大使がとんでもなく高待遇なことや、蓄財に熱心になれば億を貯めることも可能だということは驚いた。仕事的には海外に何年も駐在するのは大変なことだ。

少しくらい優遇されても良いような気もするが、機密費を流用し数億円も着服するのは違うような気がした。外務省に勤務する者すべてが、本作のような感じではないだろう。テクノクラートとして有能で激務なのは間違いないが、道を踏み外しやすいのも確かだ。

外務省の恥部を赤裸々に語りすぎだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp