ファイアスターター 下 スティーブン・キング


 2016.5.8      監禁された超能力親子 【ファイアスターター 下】

                     
ファイアスターター 下/ スティーヴン・キング

■ヒトコト感想
上巻がアンディ―とチャーリーの逃亡物語であり、メインはアンディの「押す」力についてだった。本作ではレインバードに捕まったあと、別々に軟禁され超能力を研究されるという流れになっている。アンディは薬物漬けにされ、チャーリーは心を閉ざしてしまう。「店」側がどのようにしてチャーリーに力を使わせ、研究するのか。アンディはどうなるのか。

中盤からアンディが「押す」力を思いだし、「店」の人間たちを操作し始めると、物語は大きく動きだす。親子愛と危険な能力を持った者の宿命が描かれている。特殊能力を持った親子の行く末が気になり、ページをめくる手を止めることができない。チャーリーがその能力を爆発させた時、想像を絶するような力には、驚かずにはいられない。

■ストーリー

隠れ家の別荘を奇襲された親子は捕まってしまい、「店」の本部にて軟禁生活を送ることになる。その結果、アンディは投薬によって怠惰で無気力な状態に陥り、チャーリーは心を閉ざしてしまう。ふたりにキャップとレインバードの魔の手が迫る…。

■感想
別々に軟禁生活を強いられたふたり。アンディは薬物漬けとなり、チャーリーは心を閉ざす。研究のためにチャーリーになんとか能力を使わせようと店側は策略を練る。レインバードがまるでチャーリーの親のように近づき親密な関係となり、少しづつチャーリーの心を開かせる。

幼い少女の心を開かせるのは、大人が策略を練れば簡単なことかもしれない。ただ、すべてが明るみにでたとき、チャーリーの怒りの矛先は、騙していた相手に向かうことは間違いない。そうなったとき、チャーリーの未知数の力を浴びる恐怖は存在する。

アンディが自分の力を思いだし、次々と店側の人間を「押す」のは強烈なインパクトがある。特に怪しむ相手に対して強引に押すことで、相手を思い通りに動かす。それが、最高責任者であれば、もはや脱出できたも同然なのだろう。恐ろしいのはアンディに操られたキャップの思考だ。

突如として蛇やゴルフのスイングの話がでてきたり。スライスがどうだとか語り出す。明らかな異常状態だが、それは周りには気づかれないような些細な変化でしかない。チャーリーの発火能力よりもアンディの「押す」力の方が断然恐ろしい。

ラストは追いかけるレインバードと逃げるアンディとチャーリーの対決となる。そこで、チャーリーの真の力が噴出するのだが…。少女が生命の危機に瀕したとき、すべてを吹き飛ばすような強烈な能力を発揮するのだろう。

それは、拳銃から飛び出す銃弾をも瞬時に溶かしてしまう熱量であり、人であれば、一瞬にして蒸発させてしまうパワーなのだろう。アンディの「押す」力には限界があるのだが、チャーリーの発火能力には限界がないのかもしれない。

特殊な親子とそれを利用しようとする組織の対決物語の終わりは想定外の激しさだ。



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