ファイアスターター 上 スティーブン・キング


 2015.6.30      他人を「押す」ことができる男 【ファイアスターター 上】

                     


■ヒトコト感想

わずかな金欲しさに投薬実験を受けた結果、人とは違う特殊な能力を発生させた男の話。アンディとヴィッキーが特殊能力を得た結果、ふたりの娘であるチャーリーは念力放火の能力を生れつき持つことになる。チャーリーの特殊能力を求める政府筋の組織がアンディとチャーリーを追いかける。上巻ではアンディたちの特殊な逃亡生活がメインに描かれている。

アンディの特殊能力が、相手を「押す」ということで、やり方によっては目を見えなくさせたり、眠らせて目を覚まさせないこともできる。アンディの能力は強力なようだが、能力を連続して使うことはできない。一方チャーリーの念力放火はあらゆるものを燃やす力がある。二人の逃亡生活の困難さが描かれている。

■ストーリー

苦学生だったアンディとヴィッキーは、200ドルのバイト代欲しさに「ロト・シックス」と呼ばれる新薬の投与実験を受けた。そして12年後、アンディは娘のチャーリーを連れて逃亡生活を続けていた。チャーリーは念力放火の能力を持って生まれ、その力を狙う政府の組織《ザ・ショップ》が、チャーリーを捕獲しようとしているのだ…。

■感想
アンディの人を「押す」能力はかなり強力だ。逃亡するためにタクシーを止め、金がないにも関わらずただの1ドル札を500ドル札に勘違いするよう運転手を「押す」ことができる。押した後は、アンディの頭の中は割れるように痛むため、連続して使えないという制約がある。

対してチャーリーの能力はいまだ未知数だ。生まれて間もなく身近にあるぬいぐるみを焼いたり、人の靴をあっさりと燃やしつくしてしまうという、強烈な力を持つ。チャーリーがその気になれば、ふたりを追い続ける者たちを返り討ちにすることもたやすい。

アンディとチャーリーを追いかける者たちの、容赦ない攻撃は強烈だ。自分たちに反抗する者たちをあっさりと排除しながらアンディたちを追いかける。そして、チャーリーの念力放火の餌食となる。追っ手を悪と見立て、固く禁じられた念力放火の力をチャーリーが使うことになる。

幼い子供ながらに、刷り込まれた強烈な罪悪感を吹き飛ばすほど追いつめられると、チャーリーはその力を噴出する。幼いチャーリーが自分の力を制御できずに追っ手たちを焼きつくす。

上巻としては、アンディとチャーリーの逃亡が描かれている。アンディたちは追っ手の追及から逃れるのだが…。下巻ではチャーリーがどのように成長していくかが描かれるのだろう。

念力放火能力を持った少女が成長すると、自分の力を正しく制御できるのか、それとも悪魔のような女性へと成長するのか。かなり昔の作品だが、宮部みゆきの「クロスファイア」のように、似たような作品が続々とでていることを考えると、本作はかなり影響力があるのだろう。

成長したチャーリーが、悪即断のキャラになるのか、それとも…。かなり気になるところだ。



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