永遠の0


 2015.9.27      生き残ることを重視する男 【永遠の0】

                     


■ヒトコト感想

原作は未読。凄腕のゼロ戦パイロットでありながら、戦いを避け続ける男・宮部。宮部の孫である健太郎が、祖父のことを調べようとする。健太郎が聞く人により正反対の答えが返ってくる。臆病者や卑怯者という言葉もあれば、すばらしい人物と称賛する人もいる。戦争に対するいち兵士の気持ちというのを強烈に感じる作品だ。

何よりも生きることを重視する宮部。必然的に激しい戦闘には参加せず、逃げ回ることになる。ただ、ゼロ戦の腕はすさまじいため、周りからなぜ?と疑問視される。宮部のキャラクターが常に誰に対しても敬語を使うことで、非常に丁寧で真面目な印象を受ける。それがすべてを肯定的に見せている。

■ストーリー

司法試験に落ちて進路に迷う佐伯健太郎。祖父とは血の繋がりがなく、血縁上の祖父が別にいることを知った彼は、太平洋戦争で零戦パイロットだった実の祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。

■感想
祖父のことを調べ始めると、様々な評価があることに驚く健太郎。凄腕のゼロ戦パイロットだった祖父が臆病者とののしられることに驚き、悲しくなる。かと思うと、大絶賛を受ける。宮部のキャラクターは、非常にマジメで好感がもてる。

ゼロ戦を自在に操り技術はピカイチながら、戦闘ではいち早く乱戦から離脱してしまう。何よりも生き残ることを重視する男。戦争真っただ中で、ましてゼロ戦のパイロットである男がそんな逃げ腰であることに周りがいらだつのも当然だろう。

宮部が生きることの重要さを説く。お国のためと死に急ぐ若者たちに対してもその信念は変わらない。周りのパイロットたちの関係の変化がすばらしい。最初はいらだっていた仲間たちの中で、一部の者が宮部の思いを理解し始める。

宮部が丁寧な語り口調で生きることを語る。生きるためには臆病なくらいがちょうど良い。血気盛んに特攻するというイメージがあり、戦争映画などでは、無謀な作戦を必死の思いで成功させるというのが物語になりやすい。その逆をいくパターンだ。

印象的なのはゼロ戦の戦闘描写だ。「パールハーバー」でも感じたことだが、この戦闘機の描写がしょぼいと途端につまらないものになっていただろう。宮部のすばらしい技術の表現方法も、他の人ができないことをあっさりとやってのけるだけでなく、生き残るために様々な工夫を凝らしていたというのがわかる。

誰よりも生き残ることを重視してきた男が、なぜ特攻隊に志願したのか。そして、生き残った宮部の家族はどうしたのか。独特のキャラクターであることは間違いない。

ラストの特攻描写は、強烈なインパクトがある。



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