デッドゾーン 上 スティーヴン・キング


 2016.7.21      予知能力が本人を不幸にする 【デッドゾーン 上】

                     
デッド・ゾーン(上) 新潮文庫/スティーヴンキング【著】,吉野美恵子【訳】
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■ヒトコト感想
ひょんなことから予知能力を身に着けたジョンの悲劇の物語。交通事故後の昏睡状態から目覚めると、予知能力を手に入れていた男ジョン。事故前からルーレットで出目を予測したりと、それなりに力を持っていたジョン。4年半もの昏睡状態で完全な予知能力を手に入れた代わりに恋人のセーラを失った。ジョンが昏睡状態に陥ってからの変化は目まぐるしい。

狂信的な母親と現実主義の父親。そして、いつまでもジョンを待つわけにはいかないセーラ。まさかジョンが目を覚ますとは誰も思っていない。予知能力を手にしたジョンに、どのような不幸が待ち受けているのか。決して明るく楽しい結末が待っているようには思えない。

■ストーリー

1ジョン・スミスは人気者の高校教師だった。恋人のセーラとカーニバルの見物に出かけたジョンは、屋台の賭で500ドルも儲けた。なぜか,彼には当りの目が見えたのだ。愛を確認し合ったその夜、ジョンは交通事故に遭い、4年半の昏睡状態に陥った。誰も彼が意識をとり戻すとは思わなかったが、彼は奇跡の回復を遂げた。そして予知能力も身につけた。そして―、彼の悲劇が始まった。

■感想
高校教師であるジョンと恋人のセーラ。二人の関係はごく普通のカップルだ。たまたまジョンが屋台のルーレットでバカ当たりし、その帰りにタクシーで事故に遭う。そこから不幸は始まる。タイトルは脳の中の特殊な場所という意味なのだろうか。

ジョンは屋台のルーレットで次に何がくるかをおぼろげながら予知していた。そんな状態で微かに自分の事故を予知し、昏睡状態となる。ジョンが昏睡状態の時に、ジョンの母親はひたすら神頼みに走る。このあたり「キャリー」でも登場したような、狂信的な母親が登場してくる。

4年半もの長期間の昏睡状態は、恋人を離れさせるのには十分な期間だ。セーラが結婚したと知り、目覚めたジョンはショックを受ける。目覚めてからのジョンは、どこか悟りを開いたような感覚なのだろうか。突如として明確な予知能力を手に入れ、それがマスコミに知れ渡る。

時の人となり、ジョンがその能力を示すと周りはトリックだとか、恐怖の表情を浮かべる。人は理解できない能力を持つ者が目の前に現れると、自分の理解できる理由を付けるか、排除するようになるのだろう。

上巻ではジョンが予知能力を手に入れるまでのいきさつと、ジョンに関わる人間関係が描かれている。ジョンの能力が下巻でどのような扱いを受けるのか。ジョンがその力を示すことにより不幸になる人や、ショックを受ける者は存在するのだろう。

狂信的な母親や唯一の理解者である父親など、ジョンの周りは複雑化していく。ジョンとセーラの関係も気になるところだ。強烈なインパクトはないのだが、ジワジワとした恐怖と、ジョンが今後どうなっていくかが気になるところだ。

ジョンの能力の行く末は、不幸しか見えてこない。



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