評価:
3
2017.7.19 自分のペンネームと対決する作家 【ダーク・ハーフ 下】
ダーク・ハーフ(下) 文春文庫/スティーヴン・キング
評価:2.5
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■ヒトコト感想
上巻ではサドとジョージの関係はオカルト的なものか、それとも狂信的なファンによる暴走なのか不明だった。下巻ではそれらがはっきりし、オカルト的な流れとなっている。ジョージがサドとまったく同じ指紋を持ち、声紋も同じことに対する科学的な説明はない。サドが幼少時代に脳に発生した双子の残骸を取り除いたことが、なんらかの関係があるような流れとなっている。
後半では、サドはすべてを理解し、大量のスズメを伴うことでジョージと対決しようとする。サドとジョージは一心同体であり、ジョージの体は腐っていくが、サドと出会いジョージとして小説を書くことで、ジョージは回復しサドは逆に腐り始めていく。科学的な結論をかすかに期待していたが、そうはならなかった。
■ストーリー
凄惨な殺人現場に残されていたのは、そこにいるはずのない自分の指紋と血で書かれたメッセージ。容疑がかかるサドに“影の半身”の復讐の手が徐々にしのび寄る。対決の日、何か強烈な力に呼び起されたかのように、おびただしいスズメの群れが辺り一面を覆いつくした。作家と抹殺されまいとするペンネームの壮絶な戦い。
■感想
ジョージが次々と自分を闇に葬ってきた者たちへ復讐をしてきた上巻。上巻では、ジョージの正体がどんなものか一切不明なままで、その正体への興味がつきることはなかった。下巻ではジョージの正体が早々と明らかとなる。
サドとジョージの関係は、一心同体であり、片方の思考は相手に伝わることになる。この状態はすでにオカルト全開であり、ジョージの存在が科学的に解明されることはないと感じだ。あとは、ジョージとサドの対決がどのような結末を迎えるかを楽しみに読むしかなかった。
ジョージがサドの家族を襲う。それまでジョージの存在を信じていなかった保安官もジョージに囚われの身となる。ジョージの体が腐り始める理由は不明だが、ジョージの目的が小説を書くことというのが、なんだか微妙に感じた。
一心同体のサドとジョージ。どちらかが死ぬことで、どちらかが生存できるような流れだ。腐り始めたジョージがボロボロの体でサドと対決する。対するサドには大した武器はないのだが、スズメの大群がいる。このスズメの意味がいまいちよくわからなかった。
スズメの大群によりジョージを倒すサド。どのような経緯でジョージが生まれてきたのかや、ジョージの存在についての最終的な見解はない。なんだかよくわからないまま、ジョージとサドの対決で物語が終わりを迎えたような感じだ。
作者からすると、別のペンネームで書いた本がヒットし、そのペンネームと決別するのは、もしかしたら双子と永遠の別れのような心境なのかもしれない。それが実体化したのがジョージということなのだろう。
結局オカルト的流れとなるのは、いつものパターンかもしれない。
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