2017.11.12 最終話の感じがしない 【ダマシ×ダマシ】
ダマシ×ダマシ [ 森 博嗣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
Xシリーズの最終話らしい。ただ、これが最終話という感じはない。作者の作品の特徴でもある真賀田四季が登場してこないことが大きいのだろう。探偵の小川が結婚詐欺師を調査するという、ただそれだけで終わっている。シリーズの終わりをかすかに感じるのは探偵社のオーナーである椙田が引退したということだろうか。
椙田の存在があることで萌絵や過去のシリーズとの繋がりが感じられたのだが、それがなくなると共にシリーズが終わりを迎えたということか。結婚詐欺師の調査についてはごく普通の物語だ。本作は小川の周辺のバタバタと、ある程度年齢を重ねた小川が将来を考え、バイトの真鍋や永田も未来へとすすんでいくということなのだろうか。
■ストーリー
「もしかして、ある人に騙されてしまったかもしれないんです」上村恵子は、銀行員の鳥坂大介と結婚したはずだった。求められるまま口座を新設し、預金のすべてを振り込んだ。だが、彼は消えてしまった。預金と共に。鳥坂の捜索依頼を受けたSYアート&リサーチの小川令子は、彼がほかに二人の女性を騙していたことをつきとめる。だが、その鳥坂は死体となって発見された。事務所メンバの新たなる局面。Xシリーズ最終話!
■感想
Xシリーズとしての面白さは、ごく普通の事件にあるのだろう。今回は結婚詐欺師を調査する。小川に依頼をした依頼人以外にも複数の被害者がいる。巧妙な詐欺手口とその後の足取りがパタリと消えたことから調査は難航する。
小川の調査は基本的に人脈を生かして警察関係や探偵の鷹知などから情報を得ることから始まる。その後は、バイトである真鍋や永田を使うのだが…。今回はこのふたりが未来へ向けて大きく変化していく。探偵社の内部が様変わりすることがシリーズの終わりということなのだろうか。
椙田の突然の引退により探偵社を任されることになった小川。ここで独り者の小川の微妙な心理が語られる。最後に椙田とお別れの食事をする際に、入念に準備をする小川。このあたりの描写からすると、椙田に恋をしていたのは確かだ。
小川自身は三十代で将来的にもいろいろと考えるべきことがある。バイトの真鍋と永田がいない状態で探偵社を続けていけるのか。小川自身が探偵としてやっていけるのか。条件はすこぶる良いのだが、そのあたりの葛藤も描かれている。
結婚詐欺関係については特別な印象はない。萌絵が登場したことで、かろうじてシリーズのにおいを感じることができる。椙田の正体が結局何者かというのは不明だ。恐らくはVシリーズの保呂草なのだろうが、明確な記述はない。
シリーズの終わりというのは、もっと強烈な謎を解明することを求めていたがそうはならなかった。結婚詐欺師についても、明確な目的はわからないまま、結果だけが報告されている。ラストの流れ的に、依頼者が新たに探偵社の事務員として参加するものと思われたのだが…。
シリーズの終わりという感じはしない。
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