2016.9.15 数学的謎解き要素がより強く 【CLASSICAL FANTASY WITHIN 第6話】
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■ヒトコト感想
ショーンの苦難は続く。翼竜を倒す手段を発見し、武器も手に入れた前作。そして、再び翼竜に襲われた時に倒す手段を再現することができるのか。ショーンたちの旅は苦難の連続であり、そしてどうにかして目的地の近くまでやってきたのはいいが…。前巻からロジカルな謎が登場してきたが、本作ではさらにパワーアップしている。
「ポルタトーリの壺」が問いかける謎をどのようにして解き明かすのか。長方形に鋏を一つ入れるだけで正方形にするなど、どこか数学的な謎かけのように思えてしまう。本作で戦いはひと段落し、まずは謎解きに重きを置いている。ショーンが受けた命令は、到底実現不可能かと思いきや、決して諦めない強い心でひたすら前にすすむ根性には勇気づけられる。
■ストーリー
神の創りたもうた地上で最悪の地、アル・ヴァジャイヴの危険がショーン・マスードら王室守備隊を極限を越えて追い詰める。一騎、また一騎と脱落していく仲間たち。そして一年に一度だけ、朝日のもとにその真の姿を現すという「ポルタトーリの壷」が問いかける、新たな謎が呼び起こす新たな冒険…。祖国サラディーンを、そして世界を救うタイムリミットまであと二日。
■感想
巨大な翼竜に酸を吐く恐竜。そして敵兵。様々な困難に見舞われたショーンたちは、仲間を次々と失っていき、ついには十数人しか周りには残らない状態となった。しかし、生き残った精鋭たちはしぶとく前にすすんでいく。恐怖の翼竜に対してもショーンが攻略法を発見したことで打開策が見えてくる。道中を急ぐ合間に、ふたりの女性を仲間に入れ、次の砦に到着する。
前巻から雰囲気はあったが、数学的な考え方をする謎解きが登場してくる。本作ではそれがかなりパワーアップしている、作中にしっかりと図解しながら解説されている。
「ポルタトーリの壺」が問いかける謎を解き明かすために考え込むショーン。この謎を解かない限りは祖国サラディーンを救うことはできない。ショーンが今まで直面した危機に比べると若干緩い気がした。今までは到底到着不可能なほどの長距離移動や、凶暴な妨害者たちだった。
千人いた兵士たちが瞬く間に数十人に減るような危機を乗り越えたショーンたちにとって、単純に頭を使って考えて答えをだすというのは、緊張感のベクトルが異なっている。ただ、謎自体は非常に難しいものなので、答えに興味はある。
おそらく次巻でラストとなるのだろう。謎解きも完了し、あとはサラディーンを救うために何をするのか。これ以上の肉体的な危機はおとずれないだろう。数々の修羅場を潜り抜けてきたショーンであれば、どんな危機に対しても冷静に対処するだろう。ラストも数学的な謎解きなのか、それとも純粋にわかりやすい困難なのか。明らかなのは、最後に今までとは比べ物にならないほど強烈な苦難があることだろう。
このシリーズは、序盤は絶望的状況下におかれ、それを段々と乗り越えていき、最後には安心感をもって読むことができる作品だ。
ラストへ向けてのおぜん立てがそろったような感じだ。
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