貧乏だけど贅沢 沢木耕太郎


 2015.12.20      ハワイで、のんびりとした生活に憧れる 【貧乏だけど贅沢】

                     
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■ヒトコト感想

作者が様々な人物と対談した内容が描かれている。主に旅に関する話がメインだ。十五年以上前の対談なので、古さはある。さらには、対談相手が世間的には有名なのかもしれないが、ほとんど知らない人ばかりだ。井上陽水や高倉健はよく知っている。それ以外はほぼ知らない。なので、会話の内容についても、人物を知るのと知らないのでは、かなり印象は変わるだろう。

知らない人の対談については、単純に旅の話や出来事の話などを楽しむしかない。あとは、作者がどのようにインタビューしつつ、自分のことを話しているのかなどだ。印象的なのは、作者がハワイ好きで、のんびりとしたハワイの一日のスケジュールを話す場面だ。自分も作者のハワイ生活のような生活をしてみたくなった。

■ストーリー

いきなり空港へ行ってから、そこで初めて目的地を選び、切符を買うと語る井上陽水。群ようこのアメリカ初体験は下着モニターだった。高倉健が理想とする死に場所とは…。人はなぜ旅をするのか。なぜ旅に惹かれるのか。常に考え続ける著者が、旅における「贅沢な時間」をめぐって十人と語り尽くした対談集成。

■感想
本作で作者がインタビューする人物たちの中で、井上陽水と高倉健以外は知らない。となると印象に残るのは、井上陽水と高倉健のインタビューだ。井上陽水については、やはりイメージ通りののんびりとした流の中でフラリと海外へ旅行する癖があるというのが驚いた。

なんの準備もせずに成田に行き、よい時間の飛行機があればそれに乗って海外に行く。当然オープンチケットなので、かなりの金額がかかる。このあたり、売れっ子ミュージシャンが、気分転換に大金を使う典型的なパターンだ。

高倉健についても海外旅行好きというのは意外な部分だ。寡黙で和風な男という印象があり、お忍びで京都などに旅行しているイメージだったのだが、本作ではハワイやヨーロッパ、さらにはアメリカ西海岸まで。イメージを覆されるような内容だ。

映画出演にしても、金を稼ぐためにやっていたということや、1年に十本近くも出演することと、数年で一本のみ出演することの違いなど、一般人ではわからない内容は非常に興味深い。なぜ旅をするのかというテーマに関しては、一番マッチしているのが高倉健のインタビューのような気がした。

その他の人物については、そもそもよく知らないので、純粋に内容のみの印象となる。麻雀やカジノなど、ギャンブルの印象が強い。旅とギャンブルが一体化しているような印象すらある。それはラスベガスの影響なのかもしれない。

相手に対するインタビューの中では、当然ながら作者の話もでてくる。作者が独身時代、ハワイで終日のんびりとした生活をしていたことは、非常に憧れてしまう。大学の図書館で昼寝をし、食堂で食事をし、軽くジョギングをしてバーで酒を飲む。ハワイに行ったからといって観光地をめぐるわけではない。このスタンスは最高だ。

やはりもっとも印象に残るのは作者のハワイでの生活だ。



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