2015.5.8 ブラックでオカルトな短編集 【バベル島】
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■ヒトコト感想
怪談風な短編集。オカルト色が強い短編もあれば、ミステリアスな短編もある。世にも奇妙な物語に登場しそうな短編や、ブラックユーモアに満ち溢れた作品もある。特に強烈なのは、「ステイ」だ。スイカ割りが印象的に登場してくるのだが…。頭の中で想像すると、そのグロテスクな情景に思わず気持ちが沈んでしまう。その他には、オーソドックスなオカルト物語もある。
特にエレベータの中を舞台とした作品なんてのは、定番すぎる。「上下する地獄」がそうなのだが、ネタバレ的に言ってしまえば、シックスセンスと同じパターンだ。オカルトを物語として、ひねりを利かせるには、何かしらの仕組みが必要なのだろう。それぞれの短編に趣向が凝らされているのが特徴だ。
■ストーリー
イギリス・ウェールズ北西部・彼の地の伯爵は長年「バベルの塔」建設に取り憑かれていた。六十年の歳月をかけて完成した日、悪夢の惨劇が―(表題作)。残業の夜、男は急停止したエレベーターに閉じこめられてしまう。中にはもう一人、髪の長い女が。そのビルには幽霊が出るという噂があって
■感想
「人柱」は印象深い。家を建てようとする女。やっと家を建てることができたかと思うと、邪魔が入りうまくいかない。女と関係を持つ男は…。ブラックユーモアに満ちている。家を建てようとすると、建設会社が倒産したり、やっと念願のマイホームというところで、足踏みすることにイライラする女。
男は、女の願いを叶えてやろうとする。男の思いやりを逆手にとるような女の考え方に恐ろしくなる。タイトルで想像できるような結末となるのだが、ラストの描写は思わず息苦しくなる。
「上下する地獄」は、ある男がエレベータで女の幽霊を見るという物語だ。深夜のエレベータというのは怖い。そんな夜中のエレベータに髪の長い女が乗ってきたとしたら、恐ろしくなる。さらには、そのエレベータが突然停止なんかしようものなら…。
エレベータが止まると、そこだけ一時的な密室となる。息苦しさはあるが、隠微な雰囲気となることは間違いない。女の幽霊がエレベータに乗ってきて、男は女の長い髪を触ろうとするのだが、手は髪の毛をすり抜けてしまう。やはり幽霊なのか…。ラストのオチが良い。
「バベル島」は、バベルの塔の建築に取りつかれた男の話だ。バベルの塔を作ることだけを考えた男がいた。二人の人物の手記として、物語の行く末が段々と判明してくる。何か衝撃的な事件が起きたというのは冒頭でわかるのだが、その事件の詳細は不明のまま手記はすすんでいく。
神話としてバベルの塔がどうなったのかを描き、そして、バベルの塔にあこがれた男の目的もまた…。天に到達するような巨大な塔を作ることが目的と思わせておきながら、真の目的は別にある。見事なオチだ。
ブラックとオカルトが入り混じる短編集だ。
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