悪と仮面のルール 


 2018.1.20      邪の家系に生まれた男の宿命 【悪と仮面のルール】

                     
悪と仮面のルール (講談社文庫) [ 中村文則 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
邪の家系として生まれた少年は、幼いころに父親に告げられる。邪の家系と刷り込まれた少年が成長するにつれ、少しづつ変わっていく。少年は少女を守るために父親を殺害しようとする。邪の家系は生まれながらにして様々な悪事を働いていた。悪事のレベルが非常に巨大だ。テロを裏で操作したりと、とてつもない規模だ。成長した男は、顔を整形しふたたび少女の前に現れる。

邪の家系の恐ろしさがとてつもなく表現されている。男が整形し身代わりとなった男が実は過去に事件を起こしており、刑事に追われることになる。街で起こるテロ事件や裏に隠された本質的な悪など。生まれながらにして邪の道を宿命ずけられた男の強烈な物語だ。

■ストーリー
邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に過去の事件を追う刑事が現れる。本質的な悪、その連鎖とは。

■感想
幼いころに父親から邪の家系に生まれた宿命を知らされる男。少女と共に生活し、成長するにつれお互いを意識し始める。ふたりの仲が親密になると、それを見越したかのように父親は少女にいたずらを行う。少年は少女を守るために父親を殺す決意をする。

ここで少年が父親を殺すことへのすさまじい葛藤がある。そして、少年は成長し大人となる。少女と別れた少年は成長し名前と顔を捨て別人となる。金はうなるほどあるので、少年は非常にエキセントリックな行動にでることになる。

街で発生したテロ事件の大本には、邪の家系の者の存在がある。成長した男は新谷と名前を変え、ひそかに成長した少女を追いかけ続けている。整形先の顔として選んだ新谷は過去に事件を起こしており、その結果、刑事に追われることになる。

新谷の異常さは際立っている。邪の家系に生まれた本領がはっきされている。女を見守るために探偵を雇い細かく調査させる。そして、ついには新谷は女と知り合いになる。新谷の不安定な心情がはっきりと表れている。邪の家系の異常さと新谷の執念は非常に恐ろしい。

同じく邪の家系の者たちと出会う新谷。その先には、邪の家系の者たちの、人生に対して達観したような思いがある。父親を殺し、そして、邪の家系のトップと思われる者を始末する。女を助けるために、様々な行動をとってきた新谷。

邪の家系の恐ろしさというか、異常さばかりが際立っている。邪の家系の者たちは、すべて破滅していく。これほど悲しく苦しい人生というのはないだろう。邪の家系の長である者が、少年に対してどのような意図で邪の家系の刷り込みを行ったのかは、最後まで謎だ。

邪の家系の異常さはすさまじい。



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