悪夢狩り 大沢在昌


 2016.6.13      薬を飲むと怪物に変身するマンが的流れ 【悪夢狩り】

                     
悪夢狩り [ 大沢在昌 ]
大沢在昌おすすめランキング
■ヒトコト感想
謎のドラッグを服用すると、たちまち怪物になってしまう悪魔の薬ナイトメア。散らばった薬を回収するための任務を依頼されたのは、フリーの軍事顧問・牧原。元外人部隊に所属していた実力をいかんなく発揮し、ハードボイルド作品の主人公にふさわしい渋さをみせている。が、ナイトメアを服用した者たちの怪物具合が、あまりにマンガ的というかアニメ的というか、今までの作者の作品にはないテイストなため、かなり印象が違ってくる。

タコのような触手が何本も生え、人を引きちぎる力をもつ怪物。蟹のような巨大な鋏をもつ者。悪魔のように羽が生えて大空を飛び回る者。ステレオタイプの怪物描写が、物語をマンガ的な雰囲気にしている。

■ストーリー

まだ未完成の生物兵器が過激派環境保護団体に奪取され、その一部がドラッグとして日本の若者に渡ってしまった。フリーの軍事顧問・牧原は、秘密裏に事態を収拾するべく当局に依頼され、調査を開始する。

■感想
謎の薬物ナイトメアを飲むことで怪物に変身してしまう。暴力の素養がある者が飲んだ場合は、人間と怪物の姿を自由に変化させることができ、普段は一般人のふりをして生活することができる。牧原が対決するのは人間離れした怪物ばかり。

まずは巨大なタコの怪物に変身した女と闘うことになる。頭の中ではヌメヌメとした触手をもつ巨大なタコが牧原に襲いがかる。ナイトメアが作り上げた怪物に唯一対向する手段は薬を打ち込むのみ。それも怪物に変身しているときに打ち込むしかない。かなり困難なミッションだ。

牧原がナイトメアを手に入れたと思わしき者たちを調査するために、高校の体育教師として学園に入り込む。そこではハードボイルド作品の定番として、チンピラたちをあっさりと返り討ちにする牧原が描かれている。牧原のすばらしい実力を表現しつつ、ナイトメアと関連する者たちの人間関係を描いている。

ごく普通の体育教師が生徒を助けるためにヤクザの事務所に乗り込むなんてことがあるはずもない。牧原は当然ながら、その実力からあっさりとヤクザたちを返り討ちにしてしまう。この流れはハードボイルドらしい。

ナイトメアを服用した狡猾な人物が、最後にボス的なキャラクターとして登場してくる。怪物の力を手に入れたことで、悲観するのではなく、その力を利用しようと考える者だ。ラストの戦いは、まさにマンガのラスト的な展開だ。

フランスの外人部隊にいた元傭兵が、怪物と闘う。満身創痍となりながら仲間と協力して怪物を倒す。作者の作品のイメージからすると、薬物で変貌すると言っても、激しく凶暴になる程度かと思っていたのだが…。見た目から怪物になるとは思わなかった。

作者のハードボイルド作品とは一線を画する作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp