秋に墓標を 下  


 2017.1.15      情報を駆使して複数組織と駆け引き 【秋に墓標を 下】

                     
評価:3
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■ヒトコト感想
田舎でのんびり釣り三昧の生活を送っていた松原の前に女があらわれた。その女が忘れられない松原は危険な道へと踏み込んでいく。殺し屋に狙われる秋月。その妻である杏奈が忘れられない松原。必然的に殺し屋の魔の手から秋月を守ることになる松原。杏奈が石垣島にいると知るとそこへ向かい、秋月を匿う勢力と対決することになる。

松原がハードボイルド作品にはめずらしく、個人としては銃を扱えるわけでもなく、喧嘩が強いわけでもない。様々な情報を駆使して杏奈を探し出そうとする。台湾マフィアと相対した際も、決して臆することなく駆け引きする。なぜこれほど松原が強気なのかわからない。アメリカから来た謎の殺し屋の恐ろしさが際立つ作品だ。

■ストーリー
忽然と姿を消した杏奈。どうやら秋月のエージェントと思しき男に連れ去られたらしい。彼女の隠された素性を知ってもなお、どうしようもなく杏奈に惹かれる龍は、彼女の行方を辿り始める。もう二度と戻るまいと決めた危険な世界に、再び足を踏み出すことを覚悟しながら…。復讐でも正義でもない。ただ女への激しい追走劇が、いま、始まった―。

■感想
物語の終盤までは、殺し屋の存在は明らかとはならない。秋月たちの車が襲われたり、ひそかに秋月と松原が会おうと考えていると、そこを監視していた刑事が殺されていたり。アメリカから来た刺客の存在が、秋月を守るはずの台湾マフィアさえも臆病にさせる。

松原が杏奈を助け出すために相対する相手は、秋月を匿う台湾マフィア、元刑事が殺された事件を追いかける公安、そして、アメリカからの刺客。これらを相手に立ち回るには、松原の実力が明らかに足りないような気がしてならない。

松原とそれぞれの勢力の駆け引きは強烈だ。台湾マフィアに対しては、密輸についての情報を警察に暴露するぞと脅す。台湾マフィア側としても、ただでは済まないと言い返すのだが、松原にはその覚悟があると返答する。

何の後ろ盾もない松原が、ここまで捨て身で強気にいけるのがよくわからない。そして、台湾マフィアもその勢いに押されている。警察組織に対しては、マスコミに暴露すると脅す。松原ひとりに周りが右往左往しているという状況かもしれない。

アメリカから来た刺客の正体は衝撃的だ。謎めいており、殺し屋により数々の被害がでており、さらには警察側が血眼になって探し出そうとする存在。ラストでは台湾マフィアに襲撃され激しい銃撃戦となる。そして、何の能力のない松原だが、必死に生き残ろうとする。

ハードボイルドの主人公としては、危機に直面した時の打開手段がない。が、なぜか普通のハードボイルドとあまり変わらないレベルで激しい戦いにいどんでいる。田舎で釣りを趣味にのんびり生活するオヤジとは思えない様変わりだ。

ハードボイルドらしくない主人公だ。



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