愛さずにいられない 北村薫のエッセイ 


 2017.8.17      読む人を選ぶエッセイ集 【愛さずにいられない 北村薫のエッセイ】

                     
愛さずにいられない [ 北村 薫 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
北村薫のエッセイ集。いつも通り、作者のエッセイは非常に読む人を選ぶ。良くある日常のことを描いたエッセイではない。作者のプライベートが知れるだとか、人柄が伝わってくるような類ではない。古典文学や落語など、非常に作者がこのむ分野に特化したエッセイとなっている。その中で、本作では山本周五郎賞の審査員として総評がのっている。

これは、楽しんで読むことができた。自分が良く知る作家と作品について作者が批評している。それなりに人気作家ばかりなので、気を使っていると感じられる文章だが、プロがどんな目線で作品を読むのかがよくわかる文章だ。懐かしい本の話が多いのだが、それらに興味がある人であれば、さらに楽しめることだろう。

■ストーリー
〈愛〉+〈言葉〉+〈一瞬=永遠〉=人生の時間忘れ得ぬ声、響く言葉は、いまもいつもこの胸に――。神保町の古書店に出ていた、長谷川町子の姉妹社の本。懐かしい揃いの本、七、八十冊には、タイムマシンの窓を覗いたように嬉しい、解けない謎を解くような喜びがありました――書評や選評のほか、博覧強記な文学の話題、懐かしい人、忘れ得ぬ場、日常のなかにいつもある謎を愉しむ機知についてなどを軽妙洒脱に綴る、滋味あふれる一冊。

■感想
古い書籍についての話や過去の人物についてのエッセイが印象的なエッセイ集だ。恐らく作者の取り上げるテーマについて興味があれば楽しめるだろう。自分の場合はほとんど興味がないので、読んでいてチンプンカンプンというのがほとんどの印象だ。

もっとライトで作者のプライベートが垣間見えるようなエッセイを想定していたが、大きく異なっていた。作者の人となりがわかるのではなく、古典や古い人物について、かなり詳しいというのはよくわかった。懐かしの人についてもかなり知識があるようだ。

本作の中で最も印象深いのは、山本周五郎賞の審査員を作者がしており、作者の総評についてだ。伊坂幸太郎海堂尊道尾秀介などの候補作について作者がコメントしている。どれも自分が読んだことのある作品ばかりなので、プロの作家の目からするとどのような印象になるのかが知れて良い。

特に伊坂幸太郎の作品については、伊坂ワールドについての言及がある。やはり、普通ではない印象なのだろう。すべてが高評価であるわけではないのだが、どのような意見があるのかを知れるのは良い。

作者は落語や古典など、自分がまったく知らない分野についてのエッセイが多い。伝説の人物についても語られているが、自分が良く知らない人物だ。文学的な知識が豊富であれば楽しめるのだろうか。西香奈子のエッセイは、なぜか自分と趣味やエッセイ中に登場してくるコネタの笑いの壺が合っていたので非常に楽しめた。

本作はその真逆と言って良いのかもしれない。作者は有限な人生の中で、読める本の数は決まっているため、選りすぐりを読みたいらしい。その状態で選ぶのなら、古典を選ぶと言うほど古典好きの作者だ。

趣味が合う合わないは重要だ。



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