IT 第4巻 


 2017.6.10      人の想像力を刺激するIT 【IT 第4巻】

                     
It 4 /文藝春秋/スティ-ヴン・キング/スティ−ヴン・キング、小尾芙佐/
評価:2.5
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■ヒトコト感想
子供時代に戦ったITと再び戦うために集まった大人たち。回想と現在の戦いを交えながら、とうとうITとの直接対決を迎える。子供時代の回想で様々な新事実が登場してくる。記憶の奥底に隠されていた真実。そして、ITに操られた者たちの存在。ITは直接攻撃するのではなく、何かにとりついたり人の想像力を刺激することで相手を追い詰めていく。

対して、成長して大人となったビルたちは、強い心でITと対決する。ITの正体が巨大なクモだとか、別の宇宙から来たのだとか、ちょっと意味不明になっている。ただすべての想像を超えた悪ということを表現するために、さまざまな描き方をされている。多少の犠牲を払いながら結末を迎えるのだが…。ある程度想定どおりの結末となっている。

■ストーリー
二十七年前、一度七人はITと対決した、銀のばら玉を武器に。いや、それ以上の武器は、七人の友愛と勇気で結んだ“環”だった。そのときの“約束”にしたがって、彼らはいまここにいる。欠けた“環”を結びなおして、いま一度、ITと向かい合うのだ。町の下を、ITの棲み処めざして這い進む。デリーに新しいことが起こるのを信じつつ。

■感想
27年ぶりにITを追い詰めるビルたち。子供時代の出来事がITを倒す重要なカギとなる。序盤では前巻から引き続き回想が続く。そこでITを追い詰めたことや、ヘンリーたちに攻撃された出来事が描かれている。一貫してヘンリーという悪が描かれており、子供時代はヘンリーとの対決がメインとなっている。

ただ、そこにはITの力が働いていたという流れだ。ヘンリーは27年後も登場し、そこでもITの制御下にあり、ビルたちの前に立ちはだかることになる。ITの実態の見えない恐怖が描かれている。

子供時代には強烈なインパクトのある出来事がある。ぺヴァリーとビルたちの間にいったい何があったのか。子供のトラウマやコンプレックスを突いてくるITを倒すために必要なこと。なんだかとんでもない出来事すぎて、子供の繊細な精神では耐えきれないため、頭の中から記憶が消されることもある。

ITの弱点を知らず知らずのうちに突いていた子供時代のビルたち。明確にこれがITの弱点だという描かれ方はしていない。それでも、子供たちにとっては、忘れられない強烈な出来事なのかもしれない。

ラストのITとの戦いは強烈だ。ビルたちが戦うITの姿というのは、わかりやすい悪の象徴となっている。巨大なクモのバケモノ。ついピエロのようなイメージをもっていたが、悪の正体としてのクモが描かれている。クモは一度に大量のタマゴを生むが、ITも例外ではない。

ITとの対決は、ネバネバとした触手や、巨大な怪物と戦うようなイメージだ。もっと精神的な何かかと思っていたのだが…。ITに対して現実的なオチを用意していないだろうことは想定できた。それでも、ラストの怪物との対決は少しがっかりした。

凶悪なITの存在を描くのは、わかりやすくする必要があったのだろうか。



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