B・D・T 掟の街  


 2017.5.22      無法地帯となった東京 【B・D・T 掟の街】

                     
B・D・T「掟の街」 [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
近未来の東京を舞台にした作品。混血児たちをホープレス・チャイルドと呼び、犯罪者予備軍となる。その中でホープレスの私立探偵であるケンが依頼された仕事を実行する。典型的なハードボイルドだ。危険に満ちたホープレスの世界で、死がすぐそこにあるような状態で仕事をこなすケン。冒頭から誘拐犯への身代金を届ける依頼を実行し、その過程であっさりと殺人を実行するケン。

純粋な日本人と、西と東とに人の格によって住む場所を分けられる世界。女性歌手を探すはずが、ホープレスと日本人の対立に巻き込まれるケン。どれだけ力をもつ人物でも、あっさりと殺される世界。暴力と女という典型的なハードボイルドの世界が描かれている。

■ストーリー
不法滞在外国人問題が深刻化する近未来東京。爆発的に急増した身寄りのない混血児たちは「ホープレス・チャイルド」と呼ばれ、その多くが犯罪者となっていた。彼らが巣食う東新宿はスラムと化し、いつしか、街は「B・D・T」と呼ばれた。無法地帯となった最も危険な街で、私立探偵ヨヨギ・ケンが依頼された仕事は、失踪したホープレス出身の女性歌手の捜索―。

■感想
不法滞在外国人があふれ、一部が廃墟と化した東京。元高級住宅街がホープレスのたまり場になる。広尾などの高級住宅街がドーナツ化現象で住人が離れると、そこにホープレスが住み着き廃墟の無法地帯となる。イメージはダウンタウンのような危険地帯という感じだろう。

高級車を路駐していると瞬く間に盗まれてしまう。そんな場所で私立探偵として実績をつんできたケン・ヨヨギ。生まれたのが代々木公園だからと付けられた名前らしい。とんでもない東京で展開されるハードボイルド物語だ。

ケンは典型的なハードボイルドの主人公だ。銃の扱いに長け、暴力をいとわず女にモテる。女性歌手を探し出す依頼中に、歌手の妹である女はケンにぞっこんとなる。非常にわかりやすい主人公だ。ケンは権力者におもねることなく、自分の信念で動く。そして、やられたことは必ず倍返しにする

ケンにはホープレス内に協力者がいる。これらの協力者たちが力をもっていることで、ケンの危機を救ったりもする。特別新しい要素があるわけではないが、安心して楽しめるハードボイルドだ。

無法地帯ではマシンガンやロケットランチャーが当たり前のように使用される。権力者たちはそれを見越して強烈な防御力を誇る車に乗っている。世紀末的な印象の強い東京で、ケンが行く先々で新たな死者がうまれてしまう。

プロの殺し屋とケンの対決や、警察(ピー)との駆け引きなど、シビれるような展開はある。大沢在昌のハードボイルドを読み慣れている人は、ある程度パターン化された展開なので、それほど興味を惹かれることはないだろう。

シリーズ化されているだけに、ケンのキャラは立っている。



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