7月24日通りのクリスマス


 2015.1.21      地味子が大変身! 【7月24日通りのクリスマス】

                     


■ヒトコト感想

地味で平凡な女の子・サユリがカッコいい男の聡史と再会し変わっていく物語。地味な子が身なりに気を付けると美人になるのは定番だ。ただ、心の中まで美人としての自信に満ち溢れるには時間がかかる。地味子として過ごしてきた数十年間からすぐに気持ちを変えるのは難しい。地味でモテない人生だったがゆえに、心の奥底にこびりつく考え方というのはある。

サユリ自身がその気持ちを引きずるだけならばまだしも、イケメンの弟の新しい彼女が地味であることに怒りを覚えるなど、屈折した考え方というのは非常にやっかいだ。若いころは、つい見た目で釣り合っているのか?なんてことを考えがちだ。本作はその究極の形かもしれない。

■ストーリー

地味で平凡、彼氏なし。生まれ育った長崎で単調な毎日を送る市役所勤めの目立たない女の子・サユリ(中谷美紀)は、妄想の中でポルトガルのリスボンに暮らし、出会う男性に"自分だけの王子様ランキング"をつけて退屈な日常をやり過ごしている。

クリスマスを1ヵ月後に控えたある日のこと、長年にわたり王子様ランキング1位を独走中の憧れの先輩・聡史(大沢たかお)と、OB会に向かう路面電車の中で偶然再会する。しかもなぜだかいいムード! クリスマスを前にして、舞い上がるサユリ。しかし、ふたりの仲が進展すればするほど、憧れの相手と不釣合いな自分の恋に自信が無くなっていく・・・

■感想
地味なサユリが、出会う男に”王子様ランキング”をつける。客観的に見ると非常に痛い女だ。地味なことを自覚し、ひっそりと妄想の世界に浸るのは良いとして、そこから妄想を暴走させるのはどうなのか。そんなサユリがあこがれの男と再会することで、おしゃれに目覚め、あっという間に美しい女性へと様変わりしていく。

典型的なシンデレラストーリーだが、それだけでは終わらない。見た目が美しくなったサユリではあるが、心の中はまだ自信のもてない地味なサユリのままだった。

地味な期間が長いゆえに卑屈になり、カッコいい男と釣り合っていないと考えるサユリ。その考えは自分のことだけでなく他人にまで波及する。イケメンの弟の結婚相手が地味な女だとわかると不満を言う。さらには、結婚式の場で、いつか捨てられると暴言を吐く。

相手がどうあれ、自分が常に卑屈な立場にあるような恋愛関係は長続きしない。サユリは、見た目は美しくなったとしても、心の中は変わらない。単純なシンデレラストーリーと思わせておきながら、意外に辛辣な意見があちこちにちりばめられている。

サユリと本当にお似合いなのは、幼馴染のマンガ家志望の男ではないかと思えてくる。流れ的にもそのパターンがしっくりくるのだが、本作はそうはならない。地味な子が美しくなり、かっこよい憧れの人との恋愛を成就させる。

できすぎのようだが、心の中まで変えるのは一苦労ということなのだろう。独特な映像と、この手の地味だが美しいキャラはお手の物の中谷美紀。なんだか「嫌われ松子」的なイメージを感じずにはいられないのは気のせいだろうか。

地味な設定のはずが、美しさがにじみでてしまっているのが笑える部分だ。



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