嫌われ松子の一生


2006.11.7 暗さを吹き飛ばすミュージカル調 【嫌われ松子の一生】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ストーリーはとてつもなく暗いはずなのに、その雰囲気をミュージカル調の演出と明るい雰囲気で打ち消している。悲しさ、暗さ、寂しさそれら全てを含んだ、今で言う駄目女のはずだが、見ていて応援したくなる。中谷美紀が演じているというのもあるのだろうが、幸薄そうな雰囲気は十分に感じ取ることができ、さらにその美しさから不幸な未亡人のような雰囲気さえ漂っている。脇を固める俳優達もクセのある者ばかりで、かなりこだわりがあるようにも感じられる。悲しいストーリーを明るさを通り越してパッパラパーな雰囲気にさえ昇華してしまうすごさ。単純にストーリーと演出が乖離していることでの気持ち悪さはなく、心地良ささえ感じてしまった。

■ストーリー

昭和22年。福岡県でひとりの女の子が誕生した。お姫様のような人生を夢見る彼女の名は川尻松子。教師になり爽やかな同僚とイイ感じになるも、セクハラ教師のせいで辞職に追いやられる。ここから、松子の転落人生が坂を転がり落ちるがごとく、始まっていく。愛を求める松子の前にはさまざまな男が現れるが、彼女の選択はことごとく不幸へと繋がってしまうのだった。53歳、河川敷で死体となって発見された彼女の生涯を探る甥が見たものは?

■感想
悲しいとか寂しいとか泣けてくるような感情は一切わいてこない。あるのは面白かったということと、松子の一生がとても強烈だったということだけだ。全体の雰囲気はミュージカル調で、一つ間違えれば馬鹿映画になりかねない演出がされている。アニメ的というか漫画的というかハリウッドでは絶対に考えられないようなこれぞ日本の強みだという強い主張を感じてしまった。ここまで強烈な雰囲気を作り上げながらもストーリーを壊していないのは監督の手腕のおかげなのだろう。

中谷美紀の美しい顔が次第に哀れみを誘うようになってくる。終盤にかけての足を引きずりながら歩く姿は、涙なしでは見られないシーンのはずだがそれすらも許してはくれない。下手したらコントに思われかねない演出を繰り返し、コメディ映画といわれても信じてしまうような場面がいくつかある。しかし、微妙なさじ加減で、適当なところでシリアスに戻している。緩急自在というか締める部分と緩める部分が絶妙なのがいいのかもしれない。

目まぐるしく場面が変わるのも本作の特徴かもしれない。松子の不幸な一生を駆け足で描かなければらない関係なのかもしれないが、それでも映画的には一つの場面を続けなければならない場合もあるはずなのだが、そこでも細かなコネタが入っており、飽きさせないようになっている。本作の監督は
典型的なエンターティナーで観衆を楽しませることに生きがいを感じているのだろう。気をつけて見ると、気づくか気づかないか微妙なラインの面白仕掛けを仕込ませていたり、丁寧に作りこまれている。

作品のトーンとストーリーが随分乖離しているので、混乱する人もいるかもしれない。ミュージカル調が気に入らない人もいるかもしれない。しかし、見始めると全てを忘れて2時間楽しめることは確実だろう。



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