夜明けの街で


 2014.12.9      不倫する男と家を守る女 【夜明けの街で】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作を読んだ印象とほぼ変わらないが、ミステリーの要素がかなりそぎ落とされている。秋葉が殺人者かどうかという強い葛藤が渡部に感じられず、ただ秋葉との不倫をどうすべきかと悩む情けない男の印象しかない。作品全体としても、不倫物語に力が入れられている。そして、決定的に違うのが、渡部の妻である有美子が不倫に気づいていたかということだ。

原作ではどっちつかずの恐ろしさがあったが、本作では、まるで有美子に脅されるような恐ろしさがある。妻帯者を不倫に対して尻込みさせる力はある。ただ、昼のメロドラマと変わらないと言ってしまえばそうかもしれない。映画作品として、何かポイントがあるかというと微妙だ。

■ストーリー

大手建設会社に勤める渡部(岸谷五朗)。美しい妻、有美子(木村多江)と恵まれた家庭生活を送りながらも、謎めいた雰囲気を持つ部下の秋葉(深田恭子)と、甘く残酷な不倫の恋に堕ちる。あるとき秋葉は、自身の過去に起きた事件について語り出した。その謎と彼女の孤独を知った渡部は、より一層、禁じられた恋に溺れてゆく―。この恋の驚愕の結末とは・・・?

■感想
不倫相手が犯罪者だったら?というのが原作の強い主張だったが、本作は不倫に溺れる男の単純な不倫物語になってしまっている。秋葉の家で起こった事件のインパクトが弱い。見方によっては、事件自体が必要ないのでは?と思えてくるほどだ。

最初はただの派遣社員だった女性にはまっていく男。妻があり子供がいる身でありながら、不倫の泥沼から抜け出せない。男が不倫にはまる過程を、順を追って見せられているようで、同じ男としてドキドキするのだが、それだけかもしれない。

本作のポイントはまぎれもなく有美子の存在だろう。渡部が秋葉と出かける際も、何も気づくことなく送り出す。それが、どうも気づいていながらあえて気づいていない演技のように思えてしまった。恐らく、演出上そうしているのだろう。有美子が聞かなくとも、必要以上にでかける予定をペラペラと話す渡部。

不倫から家に帰る途中、必ず橋を通りそこから見えるごく平凡なマンションの風景が心苦しくなる。決して広いとは言えないマンションで家族3人が暮らす。対して秋葉のオシャレなマンション暮らしがより苦しみを生み出している。

原作を読んでいればそれなりに楽しめるが、何の予備知識もなく本作を見たとしたら、ただの不倫映画と思うだろう。そして、家庭を守る女の恐ろしさを感じずにはいられない。都合の良い男の理論を振りかざし、家庭を守る妻を恐ろしいもののように描く。

女性はまったく共感できず、怒りすら覚えるだろう。不倫とは無縁の男ですら、妻の恐ろしさに身震いしてしまうことは間違いない。東野圭吾という名前だけで本作を見た人は、間違いなくがっかりするだろう。ミステリー要素は、ほぼないに等しいからだ。

不倫ドラマとして見る分には問題ない。


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