夜行観覧車 


 2014.5.26     高級住宅地に住む異常な家族たち 【夜行観覧車】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
高級住宅街で突如発生した殺人事件。高級住宅地に住む選民意識と、近所の目を極度に気にする家族たち。高橋家の父親を殺したのは母親なのか、それとも次男なのか。向かいに住む、家族崩壊が近い遠藤家の存在や、ラメポ(ラメ入りポシェットを持つおばさん)の視線など、異常なご近所関係が浮かび上がってくる。

物語の中盤までは、すべての登場人物にどこか異常さを感じてしまう。妻と娘が大ゲンカしているにも関わらず逃げ出す遠藤家の父親や、他人の家のことが気になってしかたがないラメポ。舞台が高級住宅街というのが、より異常さを際立たせている。このまま、異常な状態で終わるのかと思いきや、後半はあれよあれよという間に希望の持てる流れとなる。

■ストーリー

高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。

■感想
告白」と同様に、様々な人物の視点で描かれた本作。殺人事件が起こった高橋家の問題もさることながら、遠藤家の崩壊具合がすさまじい。受験に失敗し、ひねくれた性格となった娘。高級住宅地に住むことだけを夢見る母親。家庭崩壊を感じつつも、何もできず逃げ出す父親。特に娘と母親の言い争いは心が痛くなる。

もはやまっとうな親子関係ではない。誰もが異常な心理状態に思えてくる。そして、そんな遠藤家の隣に住むラメポも異常だ。海外に住む息子と同居することを夢見るおばさん。高級住宅地に住むことへのプライドの高さが、強烈な嫌味となって周りに襲い掛かる。

事件が起こった高橋家の子供たちが一番まともに思えてくる。父親が殺され、その犯人が母親ということになる。物語的には、事件当日に行方不明になった次男が犯人なのでは?という疑問をもったまま進んでいく。ミステリーの犯人を探り当てる流れに近いのだが、根本にあるのは家族関係だ。

ひとたび事件が報道されると、周りからの好奇の視線と、ご近所からの激しい攻撃が待っている。これが現実なのだろう。どんなエリート一家であっても、事件が起これば、地位も名誉もすべて捨て去られてしまう。

異常な物語として終了するかと思いきや、後半になると皆が改心しだす。特に遠藤家は、崩壊しかけた家族が、うっすらとだがつながりを取り戻せそうになる。そして、ラメポにいたっては、遠藤家のトラブルを鎮静化させる際には、今までにない常識人ぶりを見せている。

この急転直下は何なのだろうか。すべてが不幸のまま終わるのは確かに後味が悪い。かといって、一気にすべてが前向きになるのも妙に嘘くさく感じてしまう。他人の不幸を話のネタにしていた者たちに、因果応報、天罰が下る流れになると思っていたからなおさら驚きだ。

本作のドロドロしたご近所関係が真実の姿なのだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp