2013.11.7 これは問題作だ 【告白】
評価:3
■ヒトコト感想
娘を殺された中学教師が生徒の前で語ることからスタートする本作。冒頭から衝撃を受けた。淡々と語る言葉と、教師の復讐。これだけで一瞬にして物語にはまってしまった。基本的には教師の言葉で物語の全容は明らかとなる。が、その先がすばらしい。
迷惑な熱血教師や、子離れしない母親や、異常な考え方をする中学生など、キャラクターとしてはこれ以上ないほどすぐれている。それらが、自分語りを続けるうちに、衝撃的なラストが待っている。ちょっとした歪みが、すべてを壊す。不安定なバランスで保たれていた生活も、少しの歪みですべてが崩れてしまう。ミステリー的な面白さより、構成のすばらしさばかりが印象に残っている。
■ストーリー
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
■感想
女性教師の告白から始まる本作。娘を殺した人物に対する復讐はとんでもないことだ。なぜ教師の娘は殺されたのか。犯人はどんな気持ちで実行したのか。そこに至るまでの過程が、それぞれの独白の形で語られている。当人の主張と他人から見た光景は、当然ながら違う。
その変化が微妙な効果となって物語のスパイスとなっている。物語の序盤に犯人は判明しているので、犯人捜しの物語ではない。犯人がどのような報いをうけるのか。それとも、周りが翻弄されるだけなのか、興味がつきることはない。
キャラクターとして印象に残っているのは、空気の読めない新任教師のウェルテルだ。熱血教師にあこがれ、生徒たちを無駄に感化させようとする。ウェルテルのうざさが、より物語の奇妙さに繋がっている。生徒たちから見たウェルテル。そして、引きこもり生徒や、クラス委員などを巻き込み、クラスは知らない間に内部崩壊していく。
ラスト直前には、すべて女性教師による仕掛けだとわかるのだが、「まさか?」という思いが強い。偶然の要素はあるにせよ、ひとりの女性教師がすべて仕掛けたと思うと、鳥肌がたってくる。
世間的に話題になった物語だが、かなりの問題作だ。中学生がどんなことを考え、何を目的としているのか。本作を読むと、中学生がわからなくなる。大人がどんなに理解しようと頑張ったとしても、それは無駄なことにしか思えない。中学生だから許される。
ラストは、すべては犯人の思い通りになって終わるのかと思いきや、衝撃的な展開だ。物議をかもしそうだが、これはこれで良いと思う。好き勝手やってきた犯人が、最後まで好き勝手はできない。アンタッチャブルな領域に手をだせば、それ相応の報いがある。かなり強烈な報いではあるが…。
登場人物の誰もが少し異常な精神状態であることは間違いない。
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