敗れざる者たち 


 2014.4.1    天才が壊れる瞬間 【敗れざる者たち】  HOME

                     

評価:3

沢木耕太郎おすすめランキング

■ヒトコト感想

40年近く前の作品。作者の初期の代表作ともいえる作品だが、今読むと…。致命的なのは、作中でとり上げられた人物(馬)を自分がほとんど知らないということだ。敗れていった男たちの哀愁。人生をかけた戦いに臨む者たちの熱い思い。恐らく登場人物たちの活躍をリアルに感じ本作を読んでいたら、もっと違った感想をもったことだろう。

追い込まれた男たちの生き様のすばらしさと、思いもよらない脆さ。天才と呼ばれた男が崩れ去る瞬間。敗れる者たちには敗れる理由がある。が、紙一重で勝ちを拾えた状況もあったのかもしれない。とり上げられた人物たちをよく知らなくとも、すさまじい熱量を感じることができる。しかし、敗れ去る男たちの哀愁をそれ以上に感じてしまう。

■ストーリー

勝負の世界にその青春のすべてを賭けて燃え尽きていった者たちを若き大宅賞ライターが哀借こめて描くスポーツロマン。現代の若者に圧倒的な支持を得た情熱的作品

■感想
リアルタイムに読んでいたらどんな感想をもったのだろうか。「カシアス内藤」についてよく知らない。他のボクシングの名選手と比較し、才能はピカイチだが世界チャンピオンになれるほどの特別な何かがない。再起をかけた韓国での試合に、作者が同行したのだが、そこでの結果は…。

黒人と日本人とのハーフ。才能がありながら敗れた理由を作者がオブラートに包むことなく語っている。辛辣なようだが、作者がそれほどこのボクサーに入れ込んでいたというのがよくわかる記述ばかりだ。

長嶋茂雄の陰に隠れた名選手。当然、長嶋は知っているが難波は知らない。同時代に存在した名選手により不運にも活躍できなかった選手。単純に思ったのは、トレードなり守備位置を変えるなりすれば生き残る方法はあったのでは?と思ってしまう。が、ことはそれほど単純ではないのだろう。

天才で繊細な榎本喜八。引退してなお激しいトレーニングを繰り返し、いつかどこかの球団に拾ってもらうことを願った男。衝撃的だ。まったく知らないが、実はとんでもない天才バッターであり、その人生には強烈なインパクトがある。

円谷幸吉の話は衝撃的だ。名前は聞いたことがあるが、実際に何をなした人物かは知らない。東京オリンピックで三位に入り、その後自殺をとげた。作者なりの解釈が含まれているのだが、その壮絶な人生というのは、他を寄せ付けない圧倒的な迫力がある。

オリンピック選手が周りからのプレッシャーに負け自殺する。今では考えられないことだが、当時の時代背景からするとありえることなのだろうか。気軽に自分のために楽しみながらスポーツをするなんてことが考えられない世界。何より辛いのは残された周りの人々だろう。

本作をリアルタイムに読みたかった。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp