書楼弔堂 破暁 


 2014.3.29    明治の傑物たちに本を紹介 【書楼弔堂 破暁】  HOME

                     

評価:3

京極夏彦おすすめランキング

■ヒトコト感想

京極堂シリーズとはまた違ったおもむきだが、弔堂シリーズとでも言えば良いのか。大量の蔵書を抱える怪しげな本屋。そこに訪れる人それぞれにあった一冊を紹介する。狂言回し役として京極堂で言うところの関口と同じような振る舞いをするのは元旗本の高遠だ。明治維新の時代、高等遊民的な生活を続ける高遠が弔堂で様々な人物と遭遇する。

ポイントは、弔堂にて悩みが解決される人物が、実在した人物だというところだ。最初は正体不明の人物でありながら、次第に全容が見えてくる。最後には弔堂から本を受け取り、正体が明らかとなる。登場するのは当然有名人ばかりだが、基本的にそれらの人物を知らないと楽しめないだろう。自分としては、微妙な人物もいた…。

■ストーリー

明治二十年代の半ば、雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れにて、日々無為に過ごしていた高遠は異様な書舗(ほんや)と巡りあう。店の名は、書楼弔堂(しょろうとむらいどう)。 古今東西の書物が集められたその店には、最後の浮世絵師月岡芳年から書生時代の泉鏡花まで、迷える者達が〈探書〉に訪れる。変わりゆく時代の相克の中で、本と人の繋がりを編み直す、書店シリーズ、第一弾!

■感想
連作短編集である本作。それぞれの短編で弔堂より本を紹介され、その人物に未来が開けるという流れだ。悩みを解決というわけではないのだが、弔堂の言葉と紹介される本により、京極堂的に言うと憑き物が落ちる感じだ。

京極堂シリーズと比べるとかなり読みやすくなっている。が、求められる事前知識は本作の方がハードルが高い。京極堂シリーズは読みながら多くのうんちくを学べるという感じだが、本作は明治の傑物たちについて、事前に知識がなければ、面白さは半減するだろう。

本作の醍醐味として、弔堂に何かしら諭される人物が誰なのか途中で気づき、その人物の悩みやその悩みを解決するプロセスを楽しむというのがある。そのため、その人物に対しての知識がないと、弔堂が紹介する本にどんな意味があり、登場人物に関わってくるのかが伝わってこない。

浮世絵師や泉鏡花など、有名ではあるのだろうが知識が足りないため、なんだか架空の人物について話をされているような気がしてしまった。本と人との繋がりを楽しむ作品なのだが、人の部分を知らないとかなり辛いだろう。

シリーズとして高遠の存在が京極堂シリーズの関口的に良いスパイスとなっている。客観的に考えるとダメ人間だ。働かずに生活できるからとダラダラと弔堂へ通う。本人もそれをウジウジ気にする感じは、まさに関口的だ。

弔堂へやってくる人物と高遠の繋がりも微妙だが面白い。恐らく今後は勝海舟がポイントになるのだろうが、明治の傑物たちが続々と弔堂に訪れ、知られざる悩みを本によって解決されていくのは面白い。

かなり事前知識が求められるのは確かだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp