写楽 閉じた国の幻 上 


 2014.5.14     写楽の正体が判明? 【写楽 閉じた国の幻 上】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

写楽の正体は誰なのか?元大学講師が、不幸な事故で子供を失い、自暴自棄となるが、写楽の秘密にとらわれ独自の説を導き出す。回転ドアで児童が事故死するという実在の出来事を物語に組み込むことで、リアルさをだしているのだが、メインは写楽の謎についてだ。正直、写楽について知識はない。本作を読むことで、初めて知ることばかりだ。

特に写楽の正体が長年謎とされ、はっきりしないというのは知らなかった。本作ではそんな写楽の正体について、ある仮説をたてるのだが…。なんとなくだが、源義経がモンゴルに渡りチンギスハンになった、というたぐいの都市伝説のように思えてしまう。恐らく作者は何かしらの考えがあり、本作を描いているのだろうが…。まだ、上巻ではそれは明らかとならない。

■ストーリー

世界三大肖像画家、写楽。彼は江戸時代を生きた。たった10ヵ月だけ。その前も、その後も、彼が何者だったのか、誰も知らない。歴史すら、覚えていない。残ったのは、謎、謎、謎―。発見された肉筆画。埋もれていた日記。そして、浮かび上がる「真犯人」。元大学講師が突き止めた写楽の正体とは…。

■感想
写楽の名前は知っている。描いた肖像画もなんとなくわかる。インパクトのある絵ではあるのだが、その正体が謎とされているのは知らなかった。本作では元大学講師が、写楽の謎を解くため、ある仮説をたてる。それが、平賀源内が写楽ではないかということだ。

正直どちらも良く知らないが、作中では源内の没年後に写楽の絵が発表されたとある。となると…。世間の写楽研究に対して、作者なりの考えがあり小説として作品化したのだろう。物語としてどのような結末となるかは、まだ見えてこない。

ミステリーとしての要素は、写楽の謎だろうか?写楽の謎を解き明かそうとする元大学講師の前に次々と現れる謎の人物。ミステリーを読み慣れていると、つい深読みしてしまう。本作も、何かしら裏の力が働き、写楽の秘密の解明を妨害する力があるような…。

冴えない男が、出版社同士の権力争いや、妻や義父との確執に苦心しながら謎を解いていく。写楽の謎についての興味もあるのだが、物語をどのように着地させるかも気になるところだ。どことなく、小難しいウンチクを繰り返す部分は、京極夏彦風に思えなくもない。

時代的な背景や、他国との貿易など、日本史を勉強していただけでは知りえない細かな情報が盛りだくさんだ。ただ、すべてが真実かはわからない。あくまでも予想の範囲内のことであり、写楽の正体も含めて、架空の物語であることは確かだ。

仮に間違っていたからといって、大きな問題ではない。死んだと思われた平賀源内が実は生きており、名前を変え、写楽として世にでていたというのは、なんだか妙なロマンがある。そして、10ヶ月程度で姿を消した理由も、何かしら語られることだろう。

下巻での結論が楽しみで仕方がない。



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