相続人TOMOKO 


 2014.11.6      女が主役の硬派なハードボイルド 【相続人TOMOKO】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

金があり殺人技術を身につけてはいるが、国籍がなく各種組織から狙わる存在のトモコ。風俗ギャルの智子とふたりで逃亡の道を探る。トモコの存在がはっきりしないまま、刑事崩れや暗殺者から狙われることになるトモコ。読者はトモコがいったい何をしでかしたのかが気になるところ。トモコの正体は中盤まで明らかとはならない。

暗殺者を退けていくその力から、何かしら特殊な訓練を受けてきたのだということがわる。ハードボイルドらしく、仲間ができては追っ手に殺されるというのが繰り返されている。トモコと智子だけはすんでのところで難を逃れる。敵対組織が巨大であればあるほど、孤独に戦いを挑むトモコに感情移入してしまう。

■ストーリー

巨万の財産とCIAで身につけた殺人技術を武器に闘う謎の美女トモコ。国籍を失ったために巻き込んだのは、対照的な風俗ギャル智子。ふたりだけで日米複合秘密組織が牛耳る米軍、情報部、警察、ヤクザと対決し、アメリカ大統領記者会見の場へたどり着けるのか?

■感想
トモコが対決するのはCIAやヤクザなど超巨大組織だ。対してトモコの仲間は、風俗ギャルの智子や山奥で人知れず生活する多田やTVマンの木下だ。トモコが逃げる先に必ず追っ手が存在する。序盤ではトモコを追う人物をさらに追いかける人物など、3つの別組織が入り乱れる流れとなる。

トモコの暗殺技術はそれほど目立たない。が、ポイントではその実力を発揮する。逃げながらの戦いのため、追跡者から姿をくらますことも必要となる。トモコはいく先で苦難に陥ったとしても、わずかなチャンスを生かし逃げ延びてしまう。

ヤクザ組織に狙われ、アメリカではどこまで巨大かわからない組織に狙われることになる。トモコが狙われる原因が明らかとなると、生き残るための無謀な行動が見えてくる。日米の秘密組織を崩壊させるほどの秘密を持つトモコが、どのようにしてその秘密を暴露するのか。

生半可な暴露手段ではすべてを握りつぶされてしまう。情報を展開したとしても、そこから先に続かず、トモコ自身の危機につながる可能性がある。八方ふさがりのようだが、TVマンの木下の協力を元に、巨大組織を崩壊させるほどの秘密を暴露する。

本作のポイントは、アメリカの高官さえも始末してしまうほどの組織に対して、どのように対抗するかだ。日本の警視正を脅すことから始まり、やくざの親分には直談判する。さらには、アメリカの大統領に対して秘密を告げようとする。

トモコだけでなく智子や木下などの協力者たちにより、奇跡が起きるのは爽快だ。超巨大組織の穴を突くのは、極小の組織で動き回るしかない。女が主役のハードボイルドとしては、色っぽい場面が少なく、非常に硬派な印象が強い。

ヤクザの親分があっさり引き下がる場面だけは、イマイチ納得できなかった。



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