疾風ロンド 


 2014.2.6    スノボブームをふたたび! 【疾風ロンド】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

スノボ好きの作者が、スキー場をテーマとした作品の第二弾。「白銀ジャック」は、ゲレンデ爆破を阻止する物語であり、メインは広大なゲレンデでどうやって爆破ポイントを探すかということだ。本作も爆弾と生物兵器という違いはあるにせよ、白銀の世界で目的の物を探すスタンスは同じだ。スノボ好きらしく、スノボのテクニックやスキー場でのマナーについて細かく描かれている。

もしかしたら作者は、低迷するスキー場を流行らせるために、スキー&スノボブームを起こそうとしているのだろうか。経験者が描くスノボの爽快感はさすがだが、スノボやスキーの描写に力が入っている反面、謎や物語の構成については微妙な印象をもたずにはいられない。

■ストーリー

強力な生物兵器を雪山に埋めた。雪が解け、気温が上昇すれば散乱する仕組みだ。場所を知りたければ3億円を支払え―そう脅迫してきた犯人が事故死してしまった。上司から生物兵器の回収を命じられた研究員は、息子と共に、とあるスキー場に向かった。頼みの綱は目印のテディベア。だが予想外の出来事が、次々と彼等を襲う。

■感想
広大なゲレンデでどのようにして生物兵器が隠された場所を探し出すのか。スキー経験者であれば、ゲレンデで物をなくした場合、二度と見つからないと判断するだろう。ゲレンデでは目印はあってないようなもの。下手すると、簡単に自分がどこにいたかがわからなくなる可能性すらある。

それらスキー場に対するうんちくが盛りだくさんの本作。物語を盛り上げるため、インフルエンザの流行や、事なかれ主義の大人たちを組み込んでいる。スノボの描写は文句なしだが、ミステリーとして読むと…。微妙かもしれない。

生物兵器を盗まれた研究所の所長がイマイチなキャラクターだ。保身に熱心な厭な奴の印象はあるが、悪に徹し切れていない。ただ、ダメな奴という印象しかない。その他の妨害キャラクターたちも、完全な悪というわけではない。突き抜けた悪が存在しないため、全体的にぼんやりとした印象に終始してしまう。

目的は細菌兵器を探し出すはずが、機密情報保持に力を入れるあまり、とんでもなく遠まわりしている。最初から警察に連絡していれば、すべてが簡単に解決したと思わずにはいられない。

スノボ経験者としては、本作を読むことでスノボ熱が再燃した。久しぶりに白銀のゲレンデをすっ飛ばしてみたくなった。前作と同じように、経験者であれば、爽快感は伝わってくる。自分の経験と照らし合わせ、イメージを増幅させるからだ。

それが、まったくの未経験者であったとしたら、スノボやスキーに興味をもつのか疑問だ。ミステリーの内容を犠牲にし、再びブームを起こすために苦心する作者の情熱がどこまで読者に伝わるのか。適度なスノボブームは大歓迎だ。

スキー、スノボ経験者なら楽しめるだろう。



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