白銀ジャック  


 2011.7.11  スノボ好きが感じる爽快感 【白銀ジャック】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者のスノボ好きが作品からあふれている。スキー場を舞台にしたオーソドックスなミステリーだが、スノボの滑走描写に経験者ならではの緻密さがある。ゲレンデを爆破するという脅迫から物語はスタートするのだが、物語が終始犯人の言いなりになっているのが気になる部分だ。スキー場の経営の厳しさや、経営者の考え方などを含め、身代金をあっさりと払おうとする流れと、それを許す雰囲気が物語を不自然に感じさせているのだろうか。ミステリー的には、犯人は意外な人物なので驚きはある。ただ、そこにいたるまでの事態の推移がおとなしく、山場が少ないように感じてしまう。スノボ好きにとっては、読んでいると思わずゲレンデへ行きたくなる描写があるが、そうでない人には、少したいくつに感じるかもしれない。

■ストーリー

「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。

■感想
本作の醍醐味を味わえるのなら、スノボ好きだろう。作者のスノボ好きは有名で、いずれ本作のような作品がでるだろうとは思っていた。まさに予想通り、スノボ好きが、自分が感じるスノボの楽しさと爽快感を文章にし、物語に組み込んだという感じだ。スノボ経験者からすれば、臨場感があり、細部の描写もしっかりしており、スノボのスピード感と疾走感は十分ある。ただ、このスノボのスピード感を楽しめるのは、経験していないとわからないかもしれない。何も知らずに本作を読み、スノボ描写を退屈に感じると、とたんに本作すべてをつまらないと感じてしまうかもしれない。

ミステリーとしてはオーソドックスではあるが、犯人は予想外の人物だ。スキー場の経営の厳しさや、それをとり巻く環境など、厳しい現実を物語りにうまく組み込んでいる。ゲレンデを爆破するという脅迫をどの程度頭にイメージできるかも重要だ。スキーなりスノボなりをやったことがない人には、広いスキー場の一部が爆破されたところで、と思うかもしれない。最初はそう思ったが、前代未聞の状況とスキー場のイメージダウンを考えると、慎重にならざるお得ないのだろう。ミステリーとして、脅迫内容の深刻度は、緊張感と直結するものなので、このあたりは重要だ。

スノボの疾走感と、壮大なゲレンデで巻き起こる追跡劇など、スノボ好きにはたまらない場面がある。作者のミステリーの特徴の1つでもある、キャラクターの個性や事件が二転三転するといったことがほとんどないので、作者のファンは物足りなく感じるかもしれない。スキー場という限定された舞台でありながら、壮大なイメージを連想させる。それに比べると事件の重みというか、深刻さが、警察を含めないということもあるのか、随分と軽く感じてしまう。

スノボ好きでなければ、もしかしたら退屈に感じてしまうかもしれない。




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