死ぬより簡単 


 2014.11.17      見てはならないビデオテープ 【死ぬより簡単】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ハードボイルド短編集。ドンパチするハードボイルドもあれば、怪しげな謎を追い求めるものもある。特に表題作でもある「死ぬより簡単」は、記憶喪失の殺し屋という、いかにもな短編だ。登場人物たちを”道化”や”掃除屋”や”秘書”と呼ぶなんてのはありがちすぎる。それでいて、登場人物たちの利害関係が複雑かつ、記憶喪失まで絡んでくるので、油断していると置いてけぼりをくう可能性がある。

アメリカを舞台としている部分も、ガチガチのハードボイルドだ。バーボン片手に葉巻を吸いながら、相手の眉間に拳銃を突きつける。そんな渋さあふれる映像を想像してしまう。ハードボイルド好きならば、間違いなく楽しめることだろう。

■ストーリー

巨悪に挑戦する男の闘いを描くハードボイルド。記憶喪失になり組織から放り出された殺し屋の周囲で謎の殺人が起きて緊迫の世界へ引き込まれていく表題作はじめ、TV局、情報員など現代の見えざる大きな力と個人の葛藤をテーマに、大沢節が輝く。注目の作家の才能が瑞々しい文体で現れた“男たちの物語”。

■感想
「ビデオよ、眠れ」は、ハードボイルドというよりもミステリアスな感じが良い。あるビデオテープを見た男は、そのテープを見たことにより、多方面から圧力をかけられる。ビデオの内容は非常時における政府の特別CMとなっている。

なんら怪しげな雰囲気はないのだが、そのテープの出所を探ろうとすればするほど、関係者たちに危機がおとずれる。得体の知れない大きな力というのは恐ろしい。さらには、ビデオテープに何一つ怪しいところがない、というのがなおさら恐怖感をあおっている。

政府が有事の際に放送するために作成した特別CM。門外不出ということなのだろうが、オチを読んでも”なぜ?”という思いが消えることはない。原発事故での緊急避難のCMなんてのは、当時では原発事故自体がありえないことなので、政府がそれを想定したCMを作ることが許されなかったのだろう。

現実に原発事故が起こきた現代では、政府の準備が良いと思うだけだ。恐らくは、時代的な影響だろう。もし、現代の政府が戦争に突入した際のプロパガンダのCMを作っていたとしても、バカなことに税金を使って、と言われるだけだろう。

表題作が特別ハードボイルド臭が強いので短編集全体としてそう感じるのかもしれない。自分的には「ビデオよ、眠れ」の方がオチはどうあれ、ミステリアスな面白さはあった。渋い男たちが自分の使命のために必死で殺し合うハードボイルドもたまには良い。

「スイッチ・ブレード」などは、まさに典型的な人探しハードボイルドだろう。探偵が主役のハードボイルドなんて、世間にあふれているので、そのひとつという印象しかない。

作者のファンでハードボイルド好きならば、間違いなく楽しめるだろう。



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