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 2014.1.13   懐かしい思い出がよみがえる 【シネマと書店とスタジアム】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

書評と映画評と長野オリンピックとW杯のコラム集。間違いなく言えるのは、自分が知っていることに対してのコラムというのは興味がわいてくる。自分が感じた感想と、作者の感想はどう違うのか。書評については、自分が知る本が少なかったので、あまり印象に残らない。というか、書評を読んで、読みたい!と思うような本はなかった。

映画評は、自分が一番映画を見ていた時期の作品ばかりだったので、ほとんどの映画について知識があった。懐かしく思うと共に、映像が瞬時に頭の中に思い浮かんだ。忘れていた作品も、作者のコラムを読んで、突然頭の中に思い浮かんだ。十年以上前の作品だが、当時の状況を思い出しながら楽しく読むことができた。

■ストーリー

『蝶の舌』『ピンポン』などのヒット映画から、ピート・ハミルや古井由吉の本まで、著者は決して手放しに褒めない。たとえ欠点があるとしても、なぜ自分はその作品が楽しめたのかを率直にやわらかく語る。長野五輪と日韓W杯では、選手の内面に視線を向けて、プレー中の一瞬の決断や逡巡に推理をめぐらす。映画と本とスポーツをこよなく愛する著者による刺激的なコラム批評99編。

■感想
映画評は、作者が紹介する作品をほとんど見たことがあり、知っている作品ばかりだった。そんな中で「アモーレス・ペロス」のコラムを読んだとき、そのタイトルの響きをどこか聞いたことがあるなぁと思っていた。はっきりとした確証もなく読み始め、コラムを読み進めていく途中で、頭の中に突然映像が思い浮かんだ。

そこからは、ほぼすべてのストーリーが思い出せた。自分の中でまったく忘れていた作品を、作者の映画評によって思い出すことができた。これだけでも、本作を読む価値があったような気がした。

長野オリンピックは、当然リアルタイムで見ていた世代なので、興味深く読むことができた。特にジャンプのあたりは当時話題になったことだけに、熱く語られている。原田の強さと弱さをうまい具合に融合した結果が銅メダルというのはいい例えだ。

競技の細かな部分に言及するのではなく、作者なりに選手のメンタルや、ミックスゾーンで選手に対してちょっと変わったインタビューをするなど、視点が競技重視でないのも良い。作者が分析する選手のメンタルは、必ずしも正しいとは思わないが、一理あるように感じてしまう。

日韓W杯は思い出深い。自分が熱中していた時期なので感じる思いも強い。作者のW杯のコラムを読むと、自分とはだいぶ意見が違うと感じる部分がある。韓国の躍進を作者はどう感じていたのか。また、八百長が行われたのでは?という部分にも触れているが、確信部分はあえて避けているように思えて仕方がない。

ただ、作者のコラムは自分の意見を押し付ける類ではないので、ひとつの意見として楽しむことができる。当時はベスト16進出は奇跡のように思えたが、今は当たり前の目標となっている。時代を感じると共に、懐かしさもひとしおだ

興味のある分野であれば間違いなく楽しめるだろう。



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