2014.2.21 真に恐ろしいのはマスコミだ 【正義をふりかざす君へ】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
正義をふりかざし、さも当然のごとく軽微な罪でさえ執拗に攻撃するマスコミ。そんなマスコミに対する怒りのようなものを感じる作品。元新聞記者でホテルの副社長へと転身した不破。ホテルの不祥事がマスコミに追究され、その後新聞社へ吸収される。マスコミの力をもってすれば、世論を誘導するのは容易だ。他人の不祥事は大々的に報じるが、自分たちの不祥事は隠す。
不破が直面した事件というのは、一見複雑なようだが、シンプルだ。不破だけが見つけることができる秘密とは。あらゆる手段で不破を追い出そうとすればするほど、どれほど強烈な秘密なのかが気になってしまう。ラストでは思わぬ黒幕の存在に驚かされることだろう。
■ストーリー
地元紙の記者だった不破勝彦は、神永美里と結婚し、義父の仕事を助けるべくホテル業へ転身する。が、やがてホテルは不祥事を起こし義父は失脚、妻との不和も重なり、彼は故郷から逃げ出した。七年後―彼は帰りたくない故郷へと戻る。元妻の不倫相手を救うために。
問題を起こしたホテルを、正義の名のもとに攻撃した新聞社。そのトップに就任したのは、高校の先輩である大瀧丈一郎だった。ホテルは彼の傘下に吸収され、不破を恨む者たちが次々と現れる。
■感想
正義をふりかざす存在として、新聞社だけでなく、青臭い正義に感化された少年のことも示されている。父親が市長候補者であり、父親の不倫が我慢できない。息子として、また世間一般で言う正義のためなのだろう。
作中で不破に論破されていたように、正義をふりかざすことの中には、かなりの自己満足があるのだろう。マスコミは、使命感に突き動かされ大々的に報道し、その報道によりいわれなき不幸を背負う者の存在は無視する。マスコミの横暴には怒りがわいてくる。
たとえフィクションだとしても、マスコミの脅威には驚かされてしまう。マスコミがその気になれば、自分たちが気に入らない対象を攻撃することは簡単だ。些細な不始末を何十倍にも大きく報道する。それだけで世間へ多大な影響力がある。
間違った事実をマスコミが報道した場合、その対象者の人生を崩壊させる力がある。それが間違いだと分かったとしても、訂正記事は小さなものだ。つくづくマスコミは恐ろしいと思えてくる。本作を読み、小市民である自分ならば、マスコミには近づきたくないと思ってしまう。
不破を追い出そうとする黒幕は誰なのか。終盤まで新聞社の社長である大瀧が、すべての黒幕かと思いきや…。意外なラストだ。この人物が黒幕というのは、誰も想像できないだろう。大瀧が黒幕である方がしっくりくるのは確かだが…。
本作の肝である新聞社の隠された秘密が、それまでの伏線から想像するよりも小さな秘密であることがちょっと期待はずれだった。新聞社全体を揺るがす秘密なのか微妙であり、個人的な秘密に終始したような気がした。
マスコミの横暴に世間は気づいていながら、気づかないふりをしているのだろう。
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