六本木を1ダース 


 2014.12.11      六本木、バブル、男女 【六本木を1ダース】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

六本木を舞台とした大人の恋愛小説。恋愛と言いながら、やはり作者の作品は、どこかハードボイルド臭が漂っている。渋い大人の男と美しく若い女の恋愛。それをうらやましそうに見る若いだけが取り柄の男。渋い男は腕っぷしも強く、その辺のチンピラには負けない。女も落ち着きと知性がある。ただ、女は恋愛で満たされてはいない。

バブル臭とハードボイルド臭で見事な世界観を作り上げている。今ならば通用しない描写も、当時ならばしっくりきたのだろう。六本木のイメージが、昔は日曜の夜になると千葉や茨城から田舎者がやってくる、なんて描写には驚いた。今もあるのかもしれないが、さすがに、あからさまな田舎スタイルではないだろう。

■ストーリー

欲望と快楽の渦巻く街・六本木。毎夜、憑かれたように集う男、そして女―。長年六本木に暮らす著者が、バーの片隅で、深夜の交差点で、拾い綴った大人の恋愛小説集。

■感想
「見ていた女」は、まさに渋い男、美しい女、若い男のパターンだ。仲間が男に喧嘩を売りコテンパンにやられた。それを見ていた美しく若い着物の女。後日その女と偶然出会うのだが…。金や地位や力で敵わない男。完璧な男の隣には美しい女がいる。

その女が自分になびくことはあるのだろうか。物語としては夢がある。が、この渋い男があまりに完璧でかっこよすぎるため、他が霞んでしまう。六本木で飲む渋い男のイメージは、必ずしも大人というイメージはない。が、男でも見とれてしまう大人の男は存在するのだろう。

「日曜の晩に」は、まるで作者の日曜日の夜をノンフィクションで描いたような作品だ。主人公の作家は日曜日の夜に飲む相手がいないため、フラフラと六本木をさまよう。そこで昔の知り合いの女と出会うのだが…。作家という仕事は、エリートサラリーマンからするとどのように思われるのか。

作者の実体験が含まれているのだろう。サラリーマンの2倍収入を得て同じレベルの生活ができる。作家というヤクザな商売の自由さと、お嬢様気質な女性と付き合うことの困難さ、さらには見栄をはることの虚しさが描かれている。

「マッスル・パーティ」はかなり風変りな作品だ。六本木で田舎者に痛めつけられた男が、体を鍛えるという、ただそれだけの物語だ。何か心境の変化でもあったのだろうか。体の部位と筋肉の鍛え方について事細かに語られている。そして、作り上げられた肉体で例の田舎者に再会するのだが…。

筋肉を鍛えて仕返しだ!なんてストーリーではない。暴力は何も生まないが、自分を守り自信をつけるためには、筋肉をつけることも必要だということだろう。

六本木、バブル、男女とくれば、だいたい想像はつく。



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