プリンセス・トヨトミ 


 2014.11.2      国民であり続ける理由 【プリンセス・トヨトミ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
映画版を先に見たので、その印象が強い。映画はミステリー色が強く、原作は人の繋がりに焦点があてられている。大阪国の特殊さを映画版はことさら主張していたが、原作では大阪国の国民が秘密を守りながら国民でありつづける理由が力強く語られている。会計検査院の松平たち目線からすると、奇妙なことこの上ない大阪国の存在。

江戸時代から続くとんでもない大阪の秘密を、ありえないと思いながらも、ワクワクしながら読み進めることになる。プリンセス自身が、自分がプリンセスと気付かず、周りがプリンセスを守ろうとする。人知れず大阪中に自分を守る人間がいるというのは、どんな気持ちなのだろうか。大阪国という架空の存在を「もしかしたら?」と感じさせる力がある。

■ストーリー

このことは誰も知らない―四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。秘密の扉が開くとき、大阪が全停止する!?万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。

■感想
男だが女の恰好をしたいと願う大輔。この大輔の存在意義はなんなのかと疑問に思ったが、ラストの流れに意味をもたせるために存在しているのだろう。大阪国が男だけで構成されていることに、変化をつけるために大輔が存在し、大阪に住む女性たちの器の大きさまでも表現している。

誰にも知られずに存在する大阪国。松平たちが調査に入る際の不可解な雰囲気は、そのまま大阪国の怪しさを表現している。読者は大阪国の存在意義をまず疑問に思い、それが維持できる仕組みを疑問に思うだろう。

大阪国の総理大臣は持ち回りで、誰も利益を得ない。ただ、プリンセスを守るということを重視している。昔から大阪に住んでいるからといって、そんな伝統を守る気持ちからはずれる者も多いはずだ。大阪国が維持される理由も語られており、それがなんだか泣かせる流れとなっている。

恐らく地元意識が強い人ほど、感動するのかもしれない。地元に思い入れがない人でも、大阪国の存在をある特別なシチュエーションで聞かされたとしたら、あっさりと受け入れてしまうかもしれない。

プリンセスに危機が訪れたとき、大阪国の国民は立ち上がる。ドミノ倒しのように、ひとつの合図からあらゆる方面へと広がっていく様は鳥肌が立つ。一人一人の行動に大きな意味はないが、ひとりの合図を見た別の人たちがまた別の行動をとる。その結果…。

その存在すら怪しい大阪国でありながら、35年ぶりに発せられた合図に、すべての大阪国民が動き出すのはすさまじい。そんなにうまくいくのか?というのはあるが、大阪城に集う大量の大阪国民の姿を想像すると鳥肌が立ってしまう。

架空の話なのだが、もしかしたら?と思わせるパワーがある。



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