プリンセス トヨトミ


 2012.8.21   大阪国の強烈なインパクト 【プリンセス トヨトミ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作は未読。大阪という街の特殊さを大阪国として表現するのは面白い。会計検査院の調査官が会計にはなんら問題はないが、どこか引っかかる企業を調査する。その過程で、大阪全体がグルになっているような印象を受ける。なんらかの陰謀の臭いを嗅ぎとり、そして、調査するが正体が見えない。この巨大組織をにおわせる流れというのは、興味がわいてくる。ミステリーとしての面白さはここまでで、大阪国の存在と、その理由がわかってくると、あとはどう幕引きさせるかに興味がシフトする。会計検査の調査員が個性豊かで、とぼけた雰囲気の綾瀬はるかが良い味をだしている。大阪国という発想がまず面白く、その先にある大阪国を維持しようとする思想を、次の世代へ伝える方法が、なんともいえない感動を引き起こす。

■ストーリー

月八日の金曜日、午後四時。大阪が全停止した。通常の街としての営業活動、商業活動は停止。公共機関も運転をやめた。種々の非合法活動すら、この世から存在を消した。四百年に渡って封印されてきた扉を開ける重要な“鍵”となったのは、東京からやって来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。

■感想
妥協を知らない会計検査院が大阪のある企業を調査する。なんら怪しい会計はないが、どこか引っかかる。詳細な調査を実施するが、なんの不備もない。観衆は不自然な部分を見抜くが、整合性を保つためには、大阪全体がグルになるような状況でなければならない。この怪しい組織と大阪の関係というのが、一番ミステリアスで興味を引かれる部分だ。裏ではどれだけ大きな組織が動いているのか。一介の会計検査者が立ち向かえるものなのか。その後、明らかとなる大阪国の存在には度肝を抜かれてしまう。

構成としては面白い。現実の大阪という、個性溢れる地域を大阪国という存在にする。ただのアングラな団体ではなく、有事が発生すると、大阪国の者たちは何よりも優先し駆けつける。その結果、大阪全体がまるで人がすべて消え去ったような状態になる。観衆が想像するよりも、大阪国が深く大阪全体に広がっているという驚き。そのワクワク感。その後、疑問がわくのは「なぜ大阪国の住人になるのか?」ということだ。本作ではそのあたり、しっかりとした理由付けがされている。ただ、男だけというのが、大阪全停止に繋がるか微妙に思えてしまった。

本作はキャストがばっちりはまっている。とぼけた存在だが、それなりに有能な綾瀬はるかの役。すべてに厳格なエリート検査員の男と、若手エリート。この三人の存在が、すべてにおいて効果的にはたらいている。多少キャラクターのブレはあるが、最後まで大阪国の存在に対してそれなりの整合性がある。強烈なインパクトはないが、タイトルのうまさと大阪国という荒唐無稽な存在が、物語を面白くしている。大阪ならもしかして、と思わせるだけに、大阪を選んだのが正解だ。これが埼玉国なんてなると、ありえなさすぎてしらけてしまう。

大阪国のインパクトは絶大だ。



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