オリンピア-ナチスの森で 


 2014.4.23    オリンピックに挑む日本人 【オリンピア-ナチスの森で】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ベルリンオリンピックの記録映画の監督であるレニへのインタビューから始まる本作。正直、レニの話よりもベルリンオリンピックにのぞむ日本人たちの物語の方が強烈に印象に残っている。ナチスのプロパガンダ映画とみなされた作品だが、オリンピックに挑む選手たちの思いは純粋だ。

日本からベルリンへ向かう道のりの過酷さや、ベルリンからいち早く情報を届けるために、国策として伝送技術を開発しただとか。プロジェクトX的な流れもあれば、情熱大陸的にひとりの日本人選手にスポットを当てたりもする。東京オリンピックよりも前の時代。マラソンで朝鮮国籍の人物が日本人として出場し優勝していたり。当時の熱狂を感じることができる作品だ。

■ストーリー

1936年8月、ナチス政権下のベルリンで第11回オリンピックが開催された。ヒトラーが開会を宣言し、ナチスがその威信を賭けて演出した。その大会を撮影し、記録映画の傑作『オリンピア』二部作を生み出した天才レニ・リーフェンシュタール。著者は彼女にインタビューを試みる…。運命の大会に参加した日本選手団をはじめとする多くのアスリートたちの人生をたどる。

■感想
ナチス政権下でのオリンピック。そこで日本人が大活躍していたとは知らなかった。金メダルの数もそうだが、今ではまったく世界に太刀打ちできない競技も、当時は日本選手が金メダル有力候補だったらしい。陸上種目の跳躍競技で日本人選手が活躍するなんて想像できない。

棒高跳びや走り高跳び、三段跳びまで。勝つのが当たり前となり、逆にそれがプレッシャーとなるくらい、強い日本の跳躍選手団。想像できないことだらけだが、伝わってくるのは国家の威信をかけた戦いだ。

日本からベルリンまでの移動は、今とは比べ物にならないほどハードだ。1カ月近く移動に費やす。どう考えても、選手たちには良い環境であるはずがない。シベリア鉄道で長時間揺られ続ける。口に合わない食べ物を食べ、厳しい環境に耐え、そしてベルリンの地で花開く。

それが当たり前と言われてしまうと、そうなのかもしれないが、衝撃は大きい。さらには、優勝間違いなしと言われ続けた競技などは、国をあげてのプレッシャーが強烈に襲い掛かる。負けて帰ってこようものなら、切腹しかねない。

選手だけでなく、報道合戦のすさまじさも伝わってくる。ベルリンから日本へ、いち早く写真を送り届ける手段を考える。伝送技術が発展していない当時、どのようにしてベルリンから写真を送り届けたのか。まるでプロジェクトXのように、技術に挑戦する人々が描かれている。

新聞各社が報道に個性をもたせるために、様々な工夫をこらすのも面白い。今では考えられないことだらけなのだが、当時のオリンピックに対する日本人の熱量の高さを思い知らされる部分かもしれない。

ベルリンオリンピックで日本男子がマラソンで優勝していたのは知らなかった。



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