日輪の遺産


 2014.9.28      無益な戦争への思い 【日輪の遺産】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
原作を読んだ印象としては、マッカーサーが強烈にかっこよいというイメージがあった。終戦直前の日本で、マッカーサーの財宝を隠す役目を課せられた真柴。財宝を、のちの日本復興のために使うという役目はおいておくとして、隠すまでの過程と秘密保持を徹底するための方策に力が入れられている。

男気あふれるマッカーサーの行動は、確かにかっこ良いのだが、それよりも無益な戦争に対して真柴や、財宝を隠す手伝いをする少女たちの思いが強く伝わってきた。真柴たち兵士が、当時の日本兵のイメージを覆すような先進的な考え方を持っていたので、なおさら少女たちの言葉が心に染み入る。原作とはまた違ったイメージの作品だ。

■ストーリー

終戦間近の昭和20年8月10日。帝国陸軍の真柴少佐は、阿南陸軍大臣ら軍トップに呼集され、ある重大な密命を帯びる。山下将軍が奪取した900億円(現在の貨幣価値で約200兆円) ものマッカーサーの財宝を、秘密裡に陸軍工場へ移送し隠匿せよ―!その財宝は、敗戦を悟った阿南らが祖国復興を託した軍資金であった。

真柴は、小泉中尉、望月曹長と共に極秘任務を遂行。勤労動員として20名の少女達が呼集される。御国のため、それとは知らず財宝隠しに加担するが、任務の終わりが見えた頃、上層部は彼女ら非情きわまる命令を下す。そのとき真柴ら3人の軍人が取った行動とは?果たして少女達の運命は―?

■感想
終戦直前、敗北が決定的となった日本はどのような方向へとすすんでいくのか。マッカーサーの財宝を隠し、日本復興の資金とする。そのためには、誰にも知られることなく財宝を隠し続けることが必要だ。その役目を与えられたのが真柴少佐だ。この真柴がおよそ軍人らしくない、先進的な考え方の持ち主だ。

少女たちが辛く苦しい生活を嘆き、アメリカの少女たちも自分たちと同じような生活をしているのか、と真柴に尋ねた下りは衝撃的だ。言論統制がある中で、少女たちの真実をついた言葉というのは強烈だ。それを聞く真柴たち兵士の表情もまた秀逸だ。

財宝を隠す作業を命令された少女たち。秘密厳守のためには、少女たちを生かしておくわけにはいかない。衝撃的な状況をどのように真柴たちは打開するのか。戦争の悲惨さと、冷酷なまでの上層部の考え。財宝の秘密を守ることが、その後の日本繁栄へとつながるとわかっているからこそできる命令なのだろう。

真柴たちの行動は心打たれる。ただ、その後の少女たちのとった行動を考えると、さらに心が痛くなる。戦争という非日常がすべてを麻痺させているという言葉で擁護できない強烈なインパクトがそこにはある。

ラストはマッカーサーが自分の財宝を取り戻すために動き出す。ここで、マッカーサーのかっこよさが描かれるのだが、原作ほどではない。それよりも、エピローグ的に真柴やそのほかの者たちのその後が描かれていることに、少しだけ心が和んだ。

歴史のifを描いた作品なだけに、現実にはこんな美談は存在しないのだろう。ただ、日本が無様に戦争に負けただけではなく、一部の者たちは、日本人としての気概をマッカーサーに示せたという架空の物語だ。

マッカーサーの財宝が日本にある、というifを描いた作品だ。



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