日輪の遺産 


2008.4.2 終戦直後の日本に興味がわく 【日輪の遺産】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
戦中戦後の日本史には正直あまり興味はなかった。しかし、本作を読むことで興味がわいてきた。戦後の日本を救うため、マッカーサーがフィリピンに隠し持った金塊を埋蔵する。ラストの流れは少し納得できなかったが、十分楽しめた。終戦直前の日本ではどのようなことが起こり、何を考え、どうしようとしていたのか。今まで教科書でしか見たことが無いマッカーサーはどういった考えをもっていたのか。作者の考えが多分に反映されているとは思うが、それでも教科書を読むよりも数倍理解できた。作者のシェラザードと比較されがちだが、自分の中では本作の方が優れていると思う。何より、読み終わって新たに興味の輪が広がるというのがすばらしい。

■ストーリー

帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に隠したという時価200兆円の財宝。老人が遺(のこ)した手帳に隠された驚くべき真実が、50年たった今、明らかにされようとしている。財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙する感動の力作。

■感想
過去と現在が巧みに交錯し、物語に深みをもたせている。山下財宝をテーマとした本作。何より、戦後の日本史に対して、特別な興味をもっていなかった自分が、本作を読み終わったとたん、どのようにして戦争が終結し、そこにどんな暗躍があったのかに興味をもった。小説作品としては、読み終わり新たに興味の分野が広がるというのは理想的かもしれない。そして、今までそのような作品には多数出逢ったが、読み続けるうちに、少なくなってくるのは確かだ。本作はその数少ない一冊なのだろう。

戦時中の宝を探す物語としては、作者のシェラザードがある。似通ってはいるが、海と山との違いがある。単純にどのようにして宝を見つけるか、そこに力を注ぐのではなく、宝が隠された原因を示し、宝の信憑性を強め、そして、現代の者が宝をめぐって右往左往する。最後まで宝は本当にあるのかないのか、うまい引っ張り方だと思う。結末として、宝がすんなりと手に入ることは絶対にないと思っていたが本作は別の方法で宝が手に入らないようにしている。なんだか多少強引に感じたが、このパターンもありなのだろう。

メインの登場人物以外で、最も印象に残っているのは間違いなくマッカーサーだ。実際に本作のような人物であったかどうかはわからないが、非常に好感がもてる。自国の利益優先ではなく、あくまで戦後の日本を復興させようと死力をつくす。まったくアメリカ本国の地に足を踏み入れていないのも、なんだかこの人物の強烈な執念のようなものを感じてしまった。本作の流れでは、現在の日本があるのはすべて、このマッカーサーのおかげなのかもしれないとすら思えてきた。

歴史的事実はどうなのか、本作を読むと、確実に終戦直前の日本に興味がわいてくることだろう。



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