ムカシ×ムカシ 


 2014.12.24      女流作家をディスる 【ムカシ×ムカシ】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

久々のXシリーズ。ごく普通の密室殺人のはずが、河童がでるという井戸が絡むことで複雑怪奇な事件へと様変わりする。当主の死亡により残された莫大な遺産を誰が受け継ぐのか。遺産目当ての殺人かと思いきや、別の目的があった。女性の作家について語られている本作。女性は若く美しいことが価値とみなされる。作家として才能が微妙でも、若さと美貌でデビューできる

なんだか、女性が読んだら怒り狂うようなことが普通に書かれている。ミステリーとしての特殊さはほとんど感じない。キャラクターとしてもS&Mシリーズの貯金を使い果たしたのだろうか。ほぼ別物の印象しかない。河童の言い伝えが、どのように事件に絡むのか、そこがポイントだろう。

■ストーリー

「やっぱり、河童の祟りですか?」大正期、女流作家の百目一葉を世に出した旧家・百目鬼家。当主の悦造・多喜夫妻が、広大な敷地に建つ屋敷で刺殺された。遺された美術品の鑑定と所蔵品リストの作成依頼がSYアート&リサーチに持ち込まれる。河童が出るという言い伝えがある井戸から、新たな死体が発見され、事件は、異様な連続殺人の様相を呈し始めるのだった。百目鬼一族を襲う悲劇の辿りつく先は?

■感想
美術品の鑑定を依頼された椙田事務所の者たち。そこで発生する事件に巻き込まれることになる。椙田がS&Mシリーズの萌絵とどのような繋がりがあるかで保てているシリーズなので、繋がりが薄くなると個性が薄れていく。

本作についても、遺産の美術鑑定の依頼から事件に繋がるのだが、特殊な印象はない。莫大な遺産目当ての殺人なのか、それとも…。ミステリー的な面白さよりも、椙田事務所に新たに永田というキャラが入ったことによる化学反応を楽しむべき作品だろう。

河童が出ると言われた井戸で、河童に見立てたような殺人が起こる。そこには特別な印象はない。摩訶不思議な展開ではない。動機が不明な部分はあり、関係者に小説家志望の一葉がいる。そこから樋口一葉の話が登場し、さらには血縁に女流作家がいるという流れとなる。

ミステリーと女流作家の苦悩についての繋がりはない。ただ、世間が女流作家に向ける目の厳しさというのを作者は表現している。かなり過激な言葉のように感じたのは自分だけだろうか。

椙田があまり活躍せず、真鍋と小川と永田がそれぞれ動き回り事件を解決へと導く。その間に、椙田に恋をする小川や、なんとなく良い雰囲気になる永田と真鍋がある。そこでは作者の作品にはおなじみの、恋愛に対して妙にロジカルに考えてしまうオタクで朴念仁な男、真鍋の存在がある。

作者の作品は淡い恋愛物語が描かれることはない。ただ、女の方がアピールしても、男側がチグハグな思考をした結果、女があきれるというパターンが定番だ。

シリーズとしての役割を、本作がはたしているのかは微妙だ。



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