密室殺人ゲーム2.0 


 2014.10.9      殺人トリックに命をかける 【密室殺人ゲーム2.0】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

前作では衝撃的な結末をむかえ、本作ではその後が描かれるかと思いきや…。前作の異常な殺人ゲーマーたちを模倣した、新たなゲーマーたちにより、殺人ゲームが繰り返されている。模倣ではあるが、クオリティは高い。普通のミステリーならば、動機や、それを行う心理的な要因が説明できないため、実現不可能なトリックを実行している。

いかに解明されない密室トリックを作るか、ということを重視しているので、どれだけありえないことであっても、成立させてしまう。本作に登場するゲーマーたちは、まさに殺人トリックに命をかけている。ラストのトリックは衝撃的だ。絶対に、普通のミステリー作品では登場しえない異常なトリックだ。

■ストーリー

あの殺人ゲームが帰ってきた。ネット上で繰り広げられる奇妙な推理合戦。その凝りに凝った殺人トリックは全て、五人のゲーマーによって実際に行われたものだった。トリック重視の殺人、被害者なんて誰でもいい。名探偵でありながら殺人鬼でもある五人を襲う、驚愕の結末とは。

■感想
前作の結末からどうなったのか。後日談的なものは少しだけ描かれている。前作の流れを踏襲し、模倣した新たな五人が殺人ゲームを繰り広げる。キャラ設定はやあまり意味はない。テレビ電話での会話なので、相手が男なのか女なのか、大人なのか老人なのかはほとんど意味をなさない。

ただ、奇想天外なトリックで殺人を実行するだけ。普通の物語として描いた場合、トリックを実行するメリットや動機、経緯などに説得力が必要となるが、ゲームとなるとそれらはいっさい必要なくなる。まさに、なんでもありな状態だ。

前作と違う部分は、実行者がそれなりに事前準備する部分が、かすかだが描かれていることだ。のちに、ネタばらしされたとしても、その過程が事前に少しでも描かれていると、説得力は増してくる。ただ、トリック自体が突拍子もなく、またタネ明かし後も、大掛かりであったり心理的に不可能な状況は存在する。

常識では考えられないトリックであることは間違いないし、ゲームで誰にも解けないトリックを生み出す、ということ以外には、まったく意味のない殺人のように思えてしまう。

ラストのトリックは衝撃的だ。それまでのトリックが段々と複雑化し、予想外になっていく中で、最後はどんなトリックかとワクワクしながら読みすすめた。オチを読んだときには、すんなりと信じることのできないトリックだ。まさに、命がけのトリックだ。

密室殺人ゲームという名にふさわしく、明らかに前作よりもトリックの面ではパワーアップしている。ただ、1作目ほどのインパクトはなく、死んだはずの5人の代わりに、別のメンバーが密室殺人ゲームに興じたというだけの物語だ。

思いっきりなんでもありなトリックを描けるので、作者は満足だろう。



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