密室殺人ゲーム 王手飛車取り 


 2014.8.6      異常心理の恐怖 【密室殺人ゲーム 王手飛車取り】  HOME

                     

評価:3

歌野晶午おすすめランキング

■ヒトコト感想

今で言うテレビ電話で素性を隠した四人が、殺人推理ゲームを行う。単純に推理するだけでなく、実際にゲームの出題者が殺人を犯し、そのトリックを残りのメンバーで推理する。めちゃくちゃな状況だが、それを成り立たせる力がある。リアル殺人ゲームということで、緊迫感はあるのだが、登場キャラクターの異常心理により奇妙な怖さがある。

事件のトリックは非常に複雑だが、読者の疑問をそのままメンバーたちが口にし、それに対する答えが示されるので非常に理解しやすい。かなり練り込まれたトリックの数々で、本作に登場するトリックのひとつで長編が書けるのではないか?と思えるほどの出来栄えだ。ラストは異常なメンバーたちがリアルに集い、ある事件が起こる。最後の事件の結末は、わからないまま続きとなる。

■ストーリー

“頭狂人”“044APD”“aXe(アクス)”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである…。リアル殺人ゲームの行き着く先は!?

■感想
五人の奇妙なハンドルネームを持った者たちが、テレビ電話を通じて殺人推理ゲームを行う。想像上の殺人ではなく、リアルに事件を起し、報道された情報から謎を解き明かす。複雑怪奇なトリックのため、警察にバレることもなく五人はそれぞれ推理ゲームを楽しんでいる。

異常な状況ではあるが、トリックが非常に高度なので、思わず引き込まれてしまう。五人はそれぞれ仮面やボイスチェンジャーを使い素性を隠すことがラストに大きな影響を与えることになる。なぜ警察に捕まらないのか?なんてことを考えるのは無粋なのだろう。

「生首に聞いてみる?」のトリックはかなり強烈だ。密室アリバイトリックなのだが、密室はさておきアリバイトリックがすさまじい。すでに住人が死んでいるはずの部屋で叫び声が聞こえた。それはどのようにして音を出したのか。

誰もが普通に考えるパターンを最初に提示し、その後、驚くべき答えを示す。花瓶、生首、ドライアイスと誰も考えないようなトリックを作り上げている。そして、トリックを解明するプロセスが描かれることにより、順を追って説明されるため、理解しやすい。

「求道者の密室」は、想像を絶するトリックだ。密室殺人が起こり、それを解明するのだが、強固なセキュリティシステムと警備員と家族に見守られながらどのようにして殺人が実行されたのか。密室というと、どのようにして入り込んだかに焦点が当てられるが、その先入観を逆手にとったトリックだ。

入り込むことが不可能ならば、最初から入っていればよい。しかし、どのようにして入り込むのか。トリックの奇抜さもさることながら、それまでの伏線によりトリックをリアリティあるものにしている。

ラストの展開は、続きがあることを前提としているのだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp