舞田ひとみ14歳 放課後ときどき探 


 2014.11.19      思春期のひとみ 【舞田ひとみ14歳 放課後ときどき探偵】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

前作から比べると、3歳ほど成長したひとみを中心にした連作短編集だ。前作では叔父で刑事である歳三目線の物語だったが、本作では同級生の目線で物語が語られている。ひとみの成長と共に事件も変化している。日常での出来事を扱ったミステリーであることは間違いないのだが、数日で激やせした英語教師の秘密や、弟のメールの暗号文の解読などちょっとした謎なのが良い。

タイトルからすると、ひとみが主役のようだが、そうではない。ひとみが謎を解決するきっかけを与えるだけで、その他の同級生が解決する場合もある。小学生から中学生となり、思春期ゆえの微妙な心理もあり、前作よりも内容は深い。悲惨な殺人事件や難解な密室はないが、日常ミステリーとして十分楽しめる作品だ。

■ストーリー

「通りすがりの舞田ひとみですよ」中学生になった舞田ひとみは皮肉度も上昇!?彼女は退屈な日々に倦む女子中学生三人組と共に刺激を求め日常に潜む謎に挑む!募金詐欺の女は死体で発見され、激痩せした英語講師は幽霊を見たと言い張り、はたまたヤバすぎる誘拐事件にも巻き込まれ…。十四歳の青春と本格ミステリの醍醐味を詰め込んだ、シリーズ第二弾!

■感想
日常に潜む謎に挑戦する中学生女子。前作と比較すると、小学生から中学生に成長したために、親との関係がぎくしゃくするなど、わかりやすい反抗期的状況もある。メインはひとみと同級生の友達たちがドーナツショップでダラダラと話ながら謎が登場し、それを解決しようとするパターンだ。

いかにも中学生らしいゆるい展開ではあるが、事件が思いのほか深刻なパターンもある。連作短編のため、ひとつの短編の謎がそのまま別の短編の事件解決へと繋がるパターンもある。募金詐欺が登場する物語も、ささいな日常の疑問から始まるミステリーだ。

「幽霊は先生」は、最も印象に残っている短編だ。オーストラリア人の英語教師が数日で激やせした。理由を尋ねると幽霊を見たからだと言う…。激やせの疑問、幽霊の疑問と二つの日常の謎が登場してくる。どちらもひとみを中心として謎を解き明かす。

すばらしいのは、非日常の謎解きではないことだ。ありえないことではないと思わせるパターンはすばらしい。二つの疑問は繋がっているというのも構成としてよくできている。中学生でも謎を解き明かすことができる典型的なパターンなのかもしれない。

「誘拐ポリリズム」は、このシリーズにしては深刻な物語だ。ひとみの同級生の弟が誘拐された。誘拐は本当なのか、そして弟はどこに…。「電卓男」での謎解きが、そのまま本短編への解決へつながっている。些細な兄弟げんかや、親子げんかを連想させつつ、ポロリと深刻な話題も語られている。

思春期ならではの潔癖感や、女子だけに男親に対する反抗的態度など、微妙な心理も描かれている。ひとみの考え方や行動が割とさっぱりしているので、湿っぽさや陰湿さはない。自分の中学生時代と比較すると、ずいぶん思考が大人っぽいなぁと思わずにはいられない。

無邪気な子供探偵としては、中学生までが限界なのだろうか。



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