2014.9.23 普通の小学生なのが良い 【舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
タイトルから想像するのは、小学生の少女が、名探偵コナンのように事件を解決するパターンだ。が、ひとみは探偵的な活動はしない。叔父であり刑事でもある歳三が、ひとみのなんでもないつぶやきや、日常の何気ない言葉から事件解決のヒントを得るという物語だ。連作短編集であり、共通の登場人物がでてきたりと、連作の良い部分を活用している。
本作の特徴として、事件がわりとシンプルなことにある。悲劇的な結末を迎えたとしても、そこまでドロドロとした雰囲気を感じないのは、登場キャラクターがさわやかだからだろうか。作者の他の作品のように、不自然なまでにこねくり回したトリックではない。物足りなく感じる人もいるかもしれないが、シンプルで十分楽しめるライトなミステリーだ。
■ストーリー
焼け跡から金貸しの老婆の死体が発見された。体には十数ヵ所の刺し傷があり、焼け残った金庫からはお金も債務者の記録も消えていた!事件を捜査する浜倉中央署の刑事・舞田歳三。彼にはゲームとダンスが好きな11歳の姪・ひとみがいた。行き詰まった事件の謎を、彼女の何気ない言葉が解決へと導く。
■感想
「黒こげおばあさん、殺したのはだあれ?」は、個人で闇の金貸しを行っていたお婆さんが何者かに殺された事件を歳三が捜査する。ひとみは歳三が入り浸る兄の家の子供というだけで、子供らしい行動しかしない。が、ひとみのちょっとした言動から歳三が事件解決のヒントをつかむ。
金の亡者のようなお婆さんに、小学生までもが千円ほどの少額を借りていた。ひとみの活躍というよりも、歳三がどれだけ周りに気を配りながら捜査したか、という部分がポイントなのかもしれない。
「いいおじさん、わるいおじさん」は、2編に渡り影響を及ぼす作品なのだが、事件の内容はモラル的にはひどいものだ。皆から尊敬される議員の裏の顔が、わるいおじいさん?に掛かっているいるのだろう。今回もひとみの活躍というよりは、小学生が関連するという意味で本シリーズに埋め込まれたような感じだ。
事件解決後の後日談が特になく、基本的に歳三がどうやって犯人を突き止めたか、という部分で終わっている。その後の関係者たちの悲惨な状況が描かれないので、よけいに陰惨さを感じずに読み終えることができるのだろう。
「そのひとみに映るもの」は、小学生の一クラス分すべての靴が盗まれるという衝撃的事件と、リンチ殺人がうまく合わさり、面白ミステリーとなっている。本シリーズに共通するのは、割と悲惨な事件が多い。にも関わらず、ひとみが日常の中で友達の話や、事件とはまったく関係ない出来事を話すことで、突如として事件が解決していくその過程がすばらしい。
小学生の少女がでしゃばり、警察顔負けの捜査をするミステリーでなくてよかった。まっとうな刑事が、姪の言葉をヒントに難解な事件を解決するというのが、さわやかに感じてしまう。
シリーズとして続くのだが、読むのが楽しみだ。
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