2014.9.27 最高のハードボイルド 【氷の森】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
最高のハードボイルド作品だ。元麻薬捜査官であり現在は私立探偵である緒方が事件を調査する。緒方が無敵の格闘術を身につけているわけではなく、ヤクザに打ちのめされながらも、自分の知りたいことを追究しし続けるスタイルがすばらしい。緒方が関わった人物が次々と死んでいく。黒幕的存在は奇妙で恐ろしい。
街のチンピラだけでなく、ヤクザまでも従えてしまう力を持った男。圧倒的暴力があるわけではないが、相手を操作する力を持つ男。登場人物たちが、それぞれに自分の信念を持っており、それに従って行動するので、心地良いのだろう。緒方がボロボロになりながら、最後に黒幕にたどりつく場面は、鳥肌が立った。長大な作品だが、常に集中して読み続けることができた。
■ストーリー
私立探偵・緒方洸三が調査する先で、次々と関わった若者たちが殺害されていく。最も弱い部分を突かれ非業の死を迎える彼らは、やくざすら自在に操る冷血漢に支配されていた。緒方は六本木の街でひとり、暗黒に心を支配された男と対峙し、正体に迫る―。
■感想
ハードボイルドものとしての強烈な魅力がある。まず、緒方のキャラクターがすばらしい。私立探偵として誰かにおもねるでもなく、ただひたすら自分の信念で動く。近所に、未来が見える野島という男がいるが、あまり影響はない。緒方が多少腕に覚えがあり、チンピラ程度なら2人相手でもあっさりと返り討ちにできる。が、本職のヤクザともなるとそうもいかない。
緒方が無敵のスーパーマンだったら、この面白さはでないだろう。緒方にも弱さがあり、気になる女がおり、守るために必死になる。弱さがあるだけに、それを補うだけの思考がまたすばらしい。
緒方に関わった人物が次々と死んでいく。チンピラとその仲間。さらには、情報を集めるために近づいた女まで。外岡というヤクザ顔負けの実業家に脅しのような依頼をされ、荒井というヤクザに付け狙われる。八方ふさがりの状況だが、調査を進めていく緒方の精神力にしびれてしまう。
どんな相手に対してもひるむことなく、外岡には、逆に脅すようなことすら発言する。警察組織に対して逃げ惑うわけではなく、しっかりと自分の主張をし、警察に協力する。ご都合主義的ではなく、現実に則した流れがリアル感を生み出している。
すべての黒幕が奇妙に恐ろしい。本職のヤクザさえ怯えさせる男。強力な暴力装置を持っているわけではない、ただの普通の男。人の弱みを突くことで、相手を操作する術を身につけた男。荒井や外岡などの暴力に対して対抗しうる力が何なのか。
緒方が調査する過程で、次第に明らかとなってくる黒幕の存在には鳥肌が立つ。ボロボロの緒方が黒幕にたどりつくラストの場面は秀逸だ。荒井に、外岡のボディーガードが相対し、そこに緒方もいる。結末としては、多少消化不良の面もあるが、黒幕の奇妙さをより引き立てる終わり方だ。
これぞ、THEハードボイルドという作品だ。
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