キウイγは時計仕掛け 


 2014.3.13    学会の雰囲気をメインに 【キウイγは時計仕掛け】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

作者のS&Mシリーズからすべてを読み続けてこその物語だ。本作単体として読むと、かなり辛い。キウイにプルトップが差し込まれたものを手に持つ男が現れ、学長を射殺する。キウイの意味だとか事件の目的は結局あいまいなままだ。舞台が建築学会が開かれた大学であり、学会の雰囲気がメインとして描かれている。正直、学会に興味がなく縁のない人にとってはつまらないものかもしれない。

自分は微かに学会関係に参加することがあるので、雰囲気は十分つかむことができた。理系の登場人物たちが、人間味のない会話を繰り返し、事件を推理する。あいまに挟まれる小難しいウンチクを、どの程度楽しめるかによって評価は大きく変わるだろう。

■ストーリー

建築学会が開催される大学に届いた奇妙な宅配便。中には、γと刻まれたキウイにプルトップが差し込まれたものがたったひとつ、入っていた―。荷物が届いた日の夜、学長が射殺された。学会のため当地を訪れていた犀川創平は、キウイに刻まれたギリシャ文字を知り、公安の沓掛に連絡する。取材にきていた雨宮純、発表のため参加の加部谷恵美、山咲早月。ほか、海月及介、国枝桃子、西之園萌絵らも集う邂逅の一巻。

■感想
犀川や萌絵らいつものメンバーが勢ぞろいし、学会に参加する。そこで奇妙な事件が起こり、それを推理するのだが…。相変わらず何かあるのでは?と思わせる仕掛けを作り上げている。今回は、キウイにプルトップを差し込み手榴弾と見立てた暴漢の存在だ。

防犯カメラに映る、学長が射殺された瞬間。カメラ越しに見ればキウイも手榴弾に見えなくない?そのキウイにγの文字が彫られていたとなれば、そこに真賀田四季の姿を連想せずにはいられない。超絶なる天才が仕掛けた罠なのか。結局この流れはいつものとおりだ。

本作では事件よりも学会の雰囲気がメインとなっている。学会とはどういうもので、学会に参加する人はどのような人種なのか。学会に参加したことのある人ならば、大いにうなづける内容ばかりだ。ただ、それだけのことなので、興味がない人にとってはつまらないかもしれない。

登場人物たちが、相変わらず理系的思考全開で、会話もどこか無機質だ。こんな会話する人はいないだろう、と思うような会話の連続で、逆にそれが新鮮に感じてしまう。恐らくだが、作者の作品以外ではこの会話の雰囲気はだせないだろう。

真賀田四季の魅力のみで本シリーズは存在できているのだろう。神に最も近い存在の天才。それゆえにネットがつながりさえすれば、あらゆる可能性を秘めた人物。そのため、奇妙なギリシャ文字の登場は、四季の存在をイメージしてしまう。

結局、その姿が登場しないとしても、周りのシンパたちによって事件は起こされる。あまりに絶対的な存在のため、何かしら結論がでることは想定できない。読者はただ単純に四季絡みでどのような奇妙な事件が起きるのか、それだけを楽しみにするしかない。

シリーズとしては安定していると言えるのかもしれない。



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