輝天炎上 


 2014.6.30     バチスタシリーズの裏側 【輝天炎上】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

シリーズの集大成であり、螺鈿迷宮から続く物語。今まで登場したキャラクターが全員集合したような作品のため、シリーズを読み込んでいる人は懐かしく感じることだろう。本作単体で読むとなると、かなり厳しい。本作では螺鈿迷宮の天満が主役となり、過去の事件の結末と、AIセンターの行く末が描かれている。

本編とは異なる雰囲気なのは間違いない。本編が正統派に主張し政治的力により勝敗が決まるのに対して、本作は爆破や裏工作など、闇の力が占める割合が大きい。螺鈿迷宮もそうだったが、結末として大炎上がまっている。螺鈿迷宮が好きな人には、謎の雰囲気といい、かなり近いのでおすすめかもしれない。

■ストーリー

桜宮市の終末医療を担っていた碧翠院桜宮病院の炎上事件から1年後。東城大学の劣等医学生・天馬は課題で「日本の死因究明制度」を調べることに。同級生の冷泉と取材を重ねるうち、制度の矛盾に気づき始める。同じ頃、桜宮一族の生き残りが活動を始めていた。東城大への復讐を果たすために―。天馬は東城大の危機を救えるか。シリーズ史上最大の因縁がいま、解き明かされる。

■感想
螺鈿迷宮の天満が主役となり、過去の事件の真相と、新たに桜宮一族の秘密について語られている。桜宮病院の炎上事件で死んだはずの人物が、実は生きていた。身代わりとされたはずの人物も実は…。なんだか次々とわいてくる新事実に圧倒されてしまう。

螺鈿迷宮での奇妙な終末医療の話もあり、バチスタシリーズとは少し変わった雰囲気なのは間違いない。螺鈿迷宮ではまったく触れられていないのだが、本作ではいつものAI普及がメインとなっている。日本の死因究明制度をどうにかして変えたいという作者の熱い思いが、これでもかと伝わってくる。

彦根や斑鳩など、シリーズの特徴的なキャラクターが活躍する。もともとの主役である田口や白鳥は本作ではあまり活躍しない。あくまでも天満目線での物語なので、天満周辺が騒がしくなる。すなわち、きな臭い人々が動き回る。

螺鈿迷宮での終わり方を踏襲するように、本作でも最後の最後に大きな事件が起こる。メインシリーズの補完的立場なのかもしれないが、裏にこのような動きがあったというのが、別の作品でわかるというのはしびれる展開だが、本編が消化不良に感じてしまうだろう。

シリーズの集大成として、ファンは満足だろう。ただ、一見さんお断りな雰囲気は強烈で、ほぼ全てのシリーズを読んでいないと、細かい部分で楽しめないというのは残念だ。天城やマリアなど、チョイ役として名前だけの登場だったりするのだが、それでもあの作品のあのキャラクターだというのは、読んでいればわかる。

様々なキャラクターが実はいろいろなところで繋がっていたという楽しみと、ちょっと繋がりが強引ではないのか?と思える部分がある。

シリーズを読んでいることが前提の作品だ。



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