彼らの流儀 


 2013.12.13    人生いろいろ 【彼らの流儀】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

人生が様々なのは当然として、どんなに平凡と思われた人にも、他人が知ると面白い部分がある。作者が様々な人生を小説風に描いている。当然、誰もが知る有名人もいれば、名も知らない人物もいる。それらすべてがそれなりの趣をもっている。作者が目にしたちょっとした情景から、その人生を想像したり、自分の人生と照らし合わせてみたり。

人生の一部が切り取られた形で、その後どうなるのか結末はわからない。が、どの人生もひどく魅力的なものに見えて仕方がない。夢を諦めるのか、夢に突き進むのか。はたまた、テレビCMに出演したことが、人生に大きな変化をもたらしたのか。自分の人生も作者に描いてもらいたくなる。

■ストーリー

男はその朝、サウジアラビアの砂漠に雪を見た。大晦日の夜、女は手帳に挾み込む緊急連絡先の紙片にどの男の名を記すべきか思い悩む。「今」を生きる彼もしくは彼女たちの、過去も未来も映し出すような、不思義な輝き方を見せる束の間の時…。生の「一瞬」の感知に徹して、コラムでもエッセイでも、ノンフィクションでも小説でもなく、それらすべての気配を同時に漂わせる33の物語。

■感想
「緑のカップル」は、チャーミーグリーンのCMに出演した夫婦が、その後どうなったかが描かれている。確かにそのCMは覚えている。出演者が素人で、なおかつメーカーの社員がやっていたというのに驚いた。当時は理想的な夫婦像としてとりざたされた関係。

確かに幸せな夫婦像だ。そんな二人がその後どうなったかは気になるところ。ごく普通の人生のようだが、CMのようにすべてがうまくいくわけではない。人生とは面白いもので、そのCMに出演しなければ、また違った夫婦関係だったのだろう。

「鉄塔を登る男」は、東京タワーのてっぺんに昇り作業する男の話。今だとスカイツリーになるのだろうか。命綱ひとつで超高所作業に従事する男。とび職などの特殊技能職かと思いきや、メーカーの社員らしい。高所作業はどのようなもので、どんな苦楽があるのか。

印象的なのは、デスクワークばかりでは体がなまるので、東京タワーに昇るのが適度に体が鍛えられて良いという部分だ。常人にはわからない領域に到達している。誰も好き好んでそんな命の危険がある高所に行きたくはないはずだが…。やはり特殊なのだろう。

「ライク・ア・バージン」これはホントかウソか微妙だが、作者が取材したアメリカのある日本人が経験した話だ。暇なので、偶然入学した美術学校の絵のモデルがのちのマドンナだったという話だ。本当か?と思わずにはいられない。

モデルの態度が、アルバイトにも関わらず態度がでかく、遅刻もし放題という部分を読むと、もしかして…。と思わずにはいられない。アメリカンドリームを表現したような形だが、作者の話に登場する人物が、思わぬ大物だということがたまにあるので、それにも驚いてしまう。

様々な人生があるが、作者が描くと面白い物語に激変する。



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