2014.3.18 若いころから大御所風 【紙のライオン-路上の視野1】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
70年代後半のエッセイ集。作者のキャリアで言うと駆け出しに近いころなのかもしれないが、エッセイにおいてはどこか風格がある。ジャーナリズム論についてかなり力を入れて書かれているが、正直よくわからない。時代の問題もあるのだろうが、エッセイに登場してくる人物が、ほぼ自分の知らない人物ばかりだったので、特別な印象がない。
作者の書くことに対するスタンス、特に取材対象に対してどのような思いで描いているのか。ノンフィクションなので、取材がすべてかと思いきや、どうやらそうではないらしい。本作を読むことで、作者のノンフィクションに対する考え方というのを知ることができるのは間違いない。
■ストーリー
ノンフィクション作家として常に方法論を真摯に模索し、清新な作品で評判を呼んできた著者が、なぜ書くのか、体験的取材論、ニュージャーナリズム等について率直に語るエッセイ。
■感想
作者の出世作はまだ読んでいない。いずれ読むだろうが、若いうちから脚光を浴びた作者が、独自の考え方を披露する。恐らくリアルタイムに読んでいたとしたら、若造が生意気なことを言っていると思うだろう。70年代後半、ある程度作品を描き、それなりにヒットを出してきた作者が、今後どの方向へ進んでいくのか。
ジャーナリズム論について、特別な印象はない。ただ、しっかりとした考えがあるということだけはわかった。その後、作家として成功していることを考えると、作者の考えは間違いではなかったのだろう。
70年代のエッセイ集なので、正直なかなかついていくのは難しい。そんな中で印象深いのはF1グランプリのエッセイだ。ニキ・ラウダが大事故を起こし、その後、奇跡のカンバックを果たしたが…。一度事故を起こした者がその後どうなるのか。
年間チャンピオンの可能性がある最後のレースで、雨が降ったため、わずか2週でリタイアしてしまう。それは、雨で大事故を起こした記憶がフラッシュバックしたからなのだろうか。誰にも真相がわからないまま、作者独自の解説を付け加えている。
井上陽水と作者の関係を描いた作品は興味深い。別作品で、作者と陽水が頻繁に連絡をとるエッセイがあったので、仲が良いのだろうと思っていたが、本作はきっかけのようなものが描かれている。当時の関係は売れっ子の井上陽水とノンフィクションライターの作者という図式だ。
自分の感覚では、売れっ子に対してインタビューアは下手にでてインタビューをするというイメージがあったが、作者はそうではないらしい。作品全体を通して、あえて描いていないのかもしれないが、作者は相手に対して敬意をはらってはいるが、それをあからさまに態度にだすような人物ではないのだろう。
今や大御所の作者だが、若いころからその片鱗を感じることができる。
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