女王様と私 


 2014.12.15      何かがおかしい空想の世界 【女王様と私】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

44歳独身、ロリコンでオタクの引きこもり。この最悪な男、数馬が事件に巻き込まれていく。主人公が冴えない男で、小学生女子から罵倒される。さらには、傍らには常に人形を持ち、それを絵夢と呼び妹として扱う。読者に嫌悪感を抱かせるキャラであり、その思考はイチイチ気持ち悪い。ひょんなことから出会った女子小学生の言いなりとなり、女王様と奴隷の生活が始まる。

冒頭から不自然な雰囲気があり、数馬の思考のぶっ飛び方が気になっていた。そこから、数馬が事件に巻き込まれ、殺人事件の容疑者となり空想を交えながら真犯人を探し出そうとする。ミステリーとしては?な物語だ。「世界の終わり、あるいは始まり」に近い雰囲気で、読んだことがある人ならば、オチは想像つくだろう。

■ストーリー

真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「ひきこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてる。今日も可愛い妹と楽しいデートのはずだった。あの「女王様」に出逢うまでは…。数馬にとって、彼女との出逢いがめくるめく悪夢への第一歩だったのだ。―全く先が読めない展開。個性的で謎めいた登場人物。数慄的リーダビリティが脳を刺激する、未曾有の衝撃サスペンス。

■感想
渋谷で偶然女子小学生に出会い、声を掛けられ、そこから女王様と奴隷の生活が始まる。このスタート時点からして、何かがおかしい。都合がよすぎると言うか、44歳のキモオタに小学生が声をかけるだろうか?いつの間にか親密な付き合いが始まったかと思うと、デート的な展開にまで発展する。

44歳のキモオタが、雑誌のモデルをやるような小学生女子とデートをする。周りからは親子と見られたとしても、違和感はある。なぜか物語は数馬の都合の良いように進んでいく。

女王様の依頼により、不可思議な事件を調べ始める数馬。事件の調査のはずが、いつの間にか容疑者にされ、数馬が犯人となるような証拠が次々とでてくる。読者は、数馬が無意識のうちに事件を起したのでは?という想像と、小学生女子が、自分が起こした事件を数馬に押し付けたと、2パターンの考え方がある。が、結末はまったく異なる展開となる。

救いようのない数馬。空想の世界が大好きで、逮捕拘留されたとしても、空想の世界で真犯人を探し出そうとする。この時点で、物語がおかしなことに誰もが気づくだろう。

空想の中で事件を調査する過程で、なぜか人形のはずの絵夢が、いつの間にか女子高生になっている。このはちゃめちゃな空想世界が続くことになる。数馬に都合の良い空想は、4回しか実現しない。数馬が神の世界で、数馬は真犯人を探し当てるのだが…。

救いようのない展開であることは間違いない。空想の中で生き生きとする数馬。「世界の終わり、あるいは始まり」で感じたような、一時的にでも心の安定が訪れることはない。数馬に何か救いがあればまた違うのだろうが…。

このパターンを許すのであれば、ミステリーとしては成立しない。



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