2014.11.22 Mの正体が明らかに 【人類資金4】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
前作では十兆円もの金をだまし取る直前に邪魔が入り、その困難からどうやって抜け出すかが本作のスタートだ。落ちぶれたヤクザの酒田との駆け引きも魅力的だが、本作では、詐欺を成功させるために、最後の最後でMのとった手段というのが強烈だ。謎に包まれていたMの正体が明らかとなり、十兆もの金を手に入れ実現させるべきことの一端が描かれている。
本シリーズも中盤を越えたのだろう。登場人物たちが、かなり絞られてきた。市ヶ谷代表として出張ってきていた美由紀の正体が明かされ、舞台から退場する。Mの正体が明らかとなると、財団の理事や真の管理者の存在など、巨大な組織をイメージするのに十分すぎるほど素材はそろっている。何よりMの正体が判明したことで、物語は急加速している。
■ストーリー
思いがけずロシアで出くわしたのは、6年前から真舟を恨み執拗に追っていたヤクザ酒田だった。間一髪逃れた真舟だが、『M資金』を盗み出す大博打の最終局面で再び窮地に陥る。観念した真舟の前に姿を現したのは―。「世界が変わる瞬間をあなたに見せたい」。真舟に告げた“M”の正体は、計画の真の目的は?
■感想
ロシアでの巨額の詐欺事件が成功するかどうか。財団から十兆もの金を引っ張り出す方法は、ほぼ成功したかに思われた。酒田というアクシデントの存在から、どのようにして挽回するのか。真舟のとった行動は無謀ではあるが、その動きがMの正体を明かすことに繋がる…。
Mの正体は衝撃的だ。財団とは縁もゆかりもない別の巨大組織の人物かと思いきや…。そこから、Mが十兆もの資金を使って成し遂げたいことが、さわりだけ描かれている。Mの目的がどのような結果へつながるのか見えてこないだけに、ワクワク感はすさまじい。
Mの正体が明らかとなると、途端に財団と市ヶ谷が騒がしくなる。美由紀についても、Mとの個人的な関係までが明らかとなる。財団の正体と、財団を牛耳る者の存在。財団、市ヶ谷、Mという3つの組織の戦いかと思いきや、結局のところひとつの組織内における争いということが判明した。
財団という巨大すぎる組織と、それに関わる日本の重鎮たち。現実に存在すると思わせるリアル感がすさまじい。日本を裏で支えるフィクサーたちなのか、それとも日本を滅ぼす者たちなのか…。
Mが十兆もの大金を使い成し遂げたいこと。それは財団のトップすら恐れること。本作の壮大さを補完する記述として、十兆の金は財団にとってたいしたことではない、という記述がある。ただ、その資金を使ってMがやろうとすることが問題らしい。となると、否が応でもMの目的が気になってしまう。
単純な感想としては、貧しい国に新たなチャンスを与えるというだけのような気がした。ただ、そのことがどれだけ財団を恐れさせるのか、そして、説得力ある説明ができるのか。そのあたりも、次巻では気になるところだ。
舞台に残る人間は限られてきただけに、今後はより濃密な物語が描かれることだろう。
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