2014.10.13 十兆円を騙し取る手法 【人類資金3】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
Mと石と真舟が動き出す。本作では、この3人が十兆もの資金を奪い取るための仕組みと、それを実行するためのスリリングな流れが描かれている。前作までで、主要キャラたちが登場し、財団、市ヶ谷、Mたちという3つの組織の争いが描かれている。それぞれが自分たちの目的のために動きだす。
Mは財団から十兆を奪い取ろうとする。市ヶ谷はMたちの邪魔をしようとする。そこに、真舟と因縁がある落ちぶれたヤクザたちも加わり、事態は複雑化していく。石と真舟が財団のファンドマネージャをだまし、金を奪い取るスリリングな流れがすばらしい。直前で、思わぬ邪魔が入り、続きは次回へとなる。Mたちの本領が発揮された回と言えるだろう。
■ストーリー
ロシアのファンドマネージャー鵠沼英司は簿外取引を繰り返し、小国の国家予算並みの赤字を抱え込んでいた。本部の査察が入り絶体絶命となった鵠沼は窮地から逃れるため、国家間の恐ろしい陰謀に荷担するが―。真舟の一世一代の周到な計画は、強固に守られた電子上の莫大な金『M資金』を盗み出せるのか?
■感想
Mと石と真舟が財団のファンドマネージャをだまし、十兆もの資金を得ようとする。市ヶ谷の謀略により、真舟を追いかける落ちぶれたヤクザたち。巨大組織同士のひりつくような戦いも魅力だが、そこにアクシデント的に入り込む、極小の組織というのがやっかいだ。
Mたちの計画がすべてうまくいきそうになった瞬間、邪魔が入る。このあたりの緊迫感あふれる展開はすばらしい。タイミング的にはここしかない、というところで邪魔が入る。真舟たちが、どのような手段をとるのか、先が気になって仕方がない。
財団、市ヶ谷、Mという3つの組織の力関係がわかってきた。現状ではMに良いようにやられる財団と市ヶ谷。M渾身の計画を阻止するために、謎の暗殺者すら登場してくる。この暗殺者がどこの組織に属するのか。まったく別組織なのか、本作ではわからない。
石やMの能力の高さと、綿密に練り込まれた計画。そして、ファンドマネージャーを騙すために、餌として小さな成功を与える。このあたりの流れは、経済小説を読んでいるかのような気にすらなってくる。
M資金についての巨大さは前作までで想像できたのだが、本作は、世界の経済についての話がある。サブプライムローンによるリーマンショックや、9.11により世界的な投資の危機。借りた金に利子がつくことは、経済が永久に成長し続けるしかない、というのは衝撃的だ。
ここ最近の世界経済を見ていると、無尽蔵に成長するのはありえないと思えてくる。世界だけで経済を回していたら、どこかに歪がでてくる。それを救うことができるのがM資金なのだろう。
難しい経済書を読むよりも、何倍も勉強になる。
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