犬坊里美の冒険 


 2014.1.30   里美は弁護士に向いてない? 【犬坊里美の冒険】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

龍臥亭事件」で登場した犬坊里美が司法修習生として活躍する作品。里美は他の作品にも登場し、ちょくちょく石岡と絡んでいたので、御手洗シリーズのファンならばなじみ深いだろう。司法修習生として難解な事件の弁護に対応する里美が右往左往する。客観的に見ると里美は優秀な弁護士ではない。頼りがいがあるわけでもなく、推理力があるわけでもない。

ドタバタと慌てふためき、泣きながら必死で事件の真相を探ろうとする。里美の年齢設定は三十手前らしいが、それにしてはやけに頼りない。作者のキャラ付けだろうが、ミニスカートのことを容疑者にからかわれ、そこですぐに涙を見せる。後半では泣きながら弁護する。新しいタイプの弁護士なのは間違いない。

■ストーリー

雪舟祭のさなか、衆人環視の総社神道宮の境内に、忽然と現れて消えた腐乱死体。容疑者としてひとりのホームレスが逮捕・起訴された。司法修習生として研修を始めた犬坊里美は、志願してその事件を担当するが…。

■感想
犬坊里美が司法修習生として奮闘する作品。例え無実の罪であっても甘んじて受け入れる姿勢の容疑者。周りも容疑者が犯人と思い込む中、里美だけが事件の真相をさぐろうとする。衆人環視の中、突然死体が現れ、すぐに消え去る。信じられない現象の答えは誰も知らない。

本作では御手洗の推理や石岡の協力はいっさいない。里美が弁護士仲間と協力し、事件の真相を暴き出す。女性週刊誌に連載されていた関係上、里美中心であり、女性目線の物語なのだが…。容疑者に虐められるか弱い女性の描写ばかりが続いている。

里美のキャラが、ドジでおっちょこちょいで頼りないダメキャラというのが本作のポイントだろう。今までの里見は、多少チャラチャラとしたイメージはあるにせよ、簡単にメソメソ泣くようなイメージはなかった。それが本作では、ちょっとしたことですぐに泣き、弁護士としてダメな自分を卑下している。

ダメなか弱い女の子が一発逆転で事件の真相を解き明かす。確かにしびれる展開かもしれないが、それでも里美のイメージの変化にはかなり戸惑った。作中でもあるように、今回は偶然良い方に事件は解決したが、里美は弁護士に向いていないように思えてならない。

死体消失のトリックにはかなり驚かされる。というか、トリックではない。里美が最初に事件の謎を解く説明をしたときの驚きは衝撃的だ。結果的には正しいが「死体をみんなで食べた」というのは強烈すぎる。ミステリーのトリックとして一般人が死体を食べるなんてことが許されるのか。

その後、種明かしがあるのだが、もしなければ、到底納得できるトリックではない。若い女が性犯罪者の弁護をする。例え冤罪であっても、女性ならではの苦労が描かれている。

里美は今後、御手洗シリーズに登場してくるのは確実だろう。



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